事故後11ヶ月を過ぎた今になって事故当初の日本政府・東電と米NRCの危機管理対応を比較する報道が出てきました。日本では発電所から3キロ避難、10キロ屋内退避、20キロ避難、30キロ屋内待避と時間経過にしたがい徐々に範囲を広げました。一方アメリカは、いきなり発電所から半径50マイル=およそ80キロ圏内に避難勧告を出しました。
原子力事故では放射線被ばくの回避が最優先事項ですから、避難範囲を大きくとったアメリカの対応は危機管理の原則に従った選択でした。日本の対応は、避難範囲を小さくとり段階的に広げる戦略で「住民のパニック行動を防ぐ」を優先したもので、いわば心理面に焦点を合わせています。アメリカの対応は「被ばく回避」すなわち生理的側面を優先させたものです。
「最悪の事態から出発」が原子力事故の原則であることは、実は日米政府とも共通していました。東京新聞(下記に掲載)によるとアメリカでは「300キロ超の避難を議論」したとあります。日本では、朝日新聞(下記に掲載)によると「事故が起きた2週間後の昨年3月25日、事故が拡大すれば、東京都も含む半径250キロ圏内の住民が避難対象になる」と事故後10ヶ月の2012年1月に報道されました。
日本は心理優先、アメリカは生理優先の原則は「除染」「健康被害」「賠償」「住民対策」の分野にも貫かれている重要な要因の一つです。被ばくと健康被害は取り返しの効かない事態ですから「生理的」要因が優先されるべきと考えます。
300キロ超の避難を議論 第1原発事故で米NRC
東京新聞 2012年2月23日
【ワシントン共同】東京電力福島第1原発事故で、米原子力規制委員会(NRC)が原発から300キロ以上離れた場所にいる米国民に、自主避難を呼び掛けるかどうか議論していたことが22日、明らかになった。同委員会が公表した電話会議などの議事録で判明した。
実際には、米国による避難勧告は半径80キロ以内だったが、自国民の安全確保を最優先に、さまざまな検討を行った様子が浮き彫りになっている。
事故翌日「スリーマイル超える」 震災当初の保安院広報 中村幸一郎審議官
東京新聞2012年2月22日
福島第一原発の事故当初、記者会見で「炉心溶融の可能性がある」と説明した後、経済産業省原子力安全・保安院の広報担当を交代した中村幸一郎審議官(52)が21日、本紙のインタビューに応じ、その経緯などを語った。事故は深刻で、発生翌日には、米スリーマイル島原発事故を超えると思ったと当時の認識を語る一方、交代は発言とは無関係だと強調した。
交代の経緯は、政府事故調査・検証委員会の中間報告でも検証されているが、報道機関に詳細を語るのは初めてという。
中村氏は、1号機の原子炉を覆う格納容器の圧力が上昇した昨年三月十二日未明には「難しい状況に入ってきているなと思った」と、当時の認識を説明。
消防車で注水を始めたのに、原子炉の水位が低下している状況をとらえ「(過熱した)核燃料の溶融が始まっている可能性がある」と考えた。大学で学んだ原子力工学の知識も判断を下支えした。
同日午前の会見で、「(核燃料を覆う)被覆管が一部溶け始めていることも考えられる」と、初めて溶融の可能性に言及した。
午後の会見前には、「コア(幹部)の人たちはそういう(溶融の可能性があるとの)認識を持っていた」と、寺坂信昭院長(当時)らと認識を共有していたと説明。寺坂氏の了承を得て、会見で「炉心溶融の可能性がある。ほぼ進んでいるのではないか」と踏み込んだ経緯を説明した。
その後、首相官邸側が保安院の説明に懸念を示しているとの情報を得た寺坂氏から、ほかの審議官を介して「発言に注意するように」と指示された。
中村氏は同日夕の会見を最後に広報担当を交代した。その後、保安院の説明は「炉心が破損」など、「溶融」を使わなくなった。
このため、溶融発言によって交代させられたと受け取られてきたが、中村氏は「一、二時間おきに計十数回、二十五、六時間寝ずに会見をし、長い仕事になると思ったので休もうと考えた」と、自ら願い出ての交代だったと強調した。
米当局 メルトダウン想定して対応
NHK 2012年2月22日
アメリカ原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後の委員会内部のやり取りを記録した議事録を公表しました。この中では、アメリカ当局が、事故発生から5日後には、最悪の事態を想定すると1号機から3号機までの3つの原子炉がすべてメルトダウンする可能性もあるとして、日本政府が付近の住民に出した避難・屋内退避指示よりも広い範囲の勧告を行うよう提起していたことが分かりました。
アメリカ原子力規制委員会は、21日、東日本大震災が発生した去年3月11日から10日間にわたる、委員会内部の電話などによる緊急会議のやり取りを記した3000ページ以上にわたる議事録を公表しました。
それによりますと、事故発生から2日後のアメリカ東部時間12日には、福島第一原発の敷地内の周辺でセシウムなどが検出されたことが分かったことから、少なくとも原子炉内部で部分的な炉心損傷が起きている可能性があるなどとして、発電所から半径50マイル=およそ80キロ圏内に避難勧告を出すべきはないかと、幹部が原子力委員会に対して進言していたことが分かりました。
さらに、16日には、原子力規制委員会のヤツコ委員長が、最悪の事態を想定すると、1号機から3号機までの3つの原子炉がすべてメルトダウンする可能性もあると指摘し、また、ボーチャード事務局長が、「同じ事態がアメリカ国内で発生すれば、原発から50マイル以内には避難勧告を出すのが妥当だと思われる」と述べて、日本政府が福島第一原発の付近の住民に出した半径20キロ圏内の避難指示、20キロから30キロ圏の屋内退避指示よりも広い範囲の勧告を行うよう、委員会に提起していたことが分かりました。
今回、公表された議事録は、アメリカの規制当局が福島第一原発の事故を受けてどのような初動対応を行ったかを示す資料だけに、関心を集めるものとみられます。
錯そうする情報
今回公開された議事録からは、事故直後の情報の錯そうぶりも伝わってきます。3月16日の早い段階では、東京で対応に当たっている専門家チームのメンバーが、「東京電力から、4号機の使用済み燃料プールに水が残っていないとの情報を得た」として、とにかく注水を急ぐべきだとしています。しかし、ヤツコ委員長らが、50マイル圏内の避難勧告を出すと決めたあと、同じ日の遅い時間になって、「東京電力は、燃料プールに水が残っていないとは言っていない」という情報がもたらされ、委員長が、正確な情報を改めてスタッフにただす様子もうかがえます。
専門家チームのカスト代表は、「東京電力が扱うには、あまりに問題が大きすぎる」と漏らし、日本側との間で、情報が錯そうしていたことをうかがわせています。
議事録とは
公開された議事録は、原子力の安全規制を担当する原子力規制委員会が、アメリカとして、東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応を検討するために開いた電話会議などの内容を記録したものです。議事録は、アメリカの情報公開法に基づいて公開され、事故が発生した3月11日から20日までの10日分、合わせて3200ページ余りに上ります。
議事録には、原子力規制委員会のトップであるヤツコ委員長と、日本に派遣されていた担当者などとの間で交わされたやり取りが詳細に記され、日本側から得られた福島第一原発に関する情報などを基に、委員会が日本に滞在するアメリカ人の避難などを検討していった様子がうかがえます。一方、議事録では、日本にいる担当者と当時の北澤防衛大臣ら防衛省幹部とのやり取りを記した部分など一部が黒く塗りつぶされ公開されていません。非公開の理由について、委員会側は、「外国からもたらされた情報で機密に当たる」と説明しています。
福島原発:5日後「炉心溶融も」 NRC、最悪事態を想定
毎日新聞 2012年2月22日
【ワシントン白戸圭一】米原子力規制委員会(NRC)は21日、昨年3月の福島第1原発事故の発生から5日後の時点で1〜3号機原子炉のメルトダウン(炉心溶融)を懸念していたやりとりなどが含まれた議事録を公開した。
議事録によると、NRCは事故発生翌日の昨年3月12日、原子炉内部で部分的な炉心の損傷が起きている可能性を想定。ヤツコNRC委員長は同月16日、「最悪の場合、三つの原子炉がメルトダウンを起こしている可能性がある」と発言した。
また、4号機の使用済み核燃料プールから冷却水が蒸発して放射性物質が漏れる事態を危惧。NRCのボーチャード事務局長が「同じ事態が米国で発生すれば、原発から半径50マイル(約80キロ)以内に避難勧告を出すのが妥当と思われる」と進言していた。
議事録は事故発生から10日間のNRC内部の会議や電話でのやり取りなどを記録した内部文書で、約3000ページ。米メディアなどが情報公開法に基づいて公開を請求していた。
半径250キロ圏内を避難対象 政府の「最悪シナリオ」
朝日新聞 2012年1月6日
東京電力福島第一原発で事故が起きた2週間後の昨年3月25日、事故が拡大すれば、東京都も含む半径250キロ圏内の住民が避難対象になるという「最悪シナリオ」を政府が想定していたことを、6日の閣議後会見で細野豪志原発担当相が明らかにした。
シナリオは、当時首相補佐官だった細野氏が菅直人首相の指示を受け、近藤駿介原子力委員長に依頼、委員長が個人的に作成して政府に提出した。
資料では、最悪のシナリオとして、原子炉2炉心分の1535体もの燃料が貯蔵されていた4号機の使用済み燃料プールの燃料が溶けることを想定した。プールは3月15日の原子炉建屋の爆発でむき出しになっており、さらに1号機の原子炉が水素爆発を起こして作業員が退避、復旧作業が止まると、14日程度でプールから放射性物質が大量に放出されると推定した。
posted by ichi3 at 02:00| 東京

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