以下は豚インフルエンザ発生の第一報
今後どのような展開を見せるのか予断を許さない緊張感があります
「豚インフル」が米・メキシコで WHO発表、60人死亡の疑い
4月24日 日経新聞
【ロンドン=岐部秀光】世界保健機関(WHO)報道官は24日、米国とメキシコで最近、人間への「豚インフルエンザ」の感染が報告され、約60人が死亡した疑いがあると明らかにした。米保健当局は国内で見つかったウイルスは豚、鳥、ヒトの混合型でこれまでに見つかっていないタイプで、「ヒトからヒト」への感染が起きていると指摘。両国で新型ウイルスによるインフルエンザが流行する恐れがある。
WHOによるとメキシコ市周辺だけで800件の感染が疑われる報告があり、うち57人が死亡した。このほかメキシコ中部サンルイポトシでも24件の報告があり3人が死亡しているという。同国内で多くの学校が学級閉鎖や休校に追い込まれた。
米国ではカリフォルニア州とテキサス州で合計7人の感染報告があったが、全員が回復したという。当局は感染者や彼らと接触した人々の検査を行い、メキシコからもサンプルを取り寄せて感染経路の特定を急いでいる。感染力はまだ不明としている。
新型インフルエンザのパンデミック・シミュレーション
市原が担当している「環境心理学」(家政学院大)と「免疫と自己のシステム」(早稲田大)の授業で使っている上記の図版とコメントです。「リスクコミュニケーション」、「免疫と感染」がキーワードです。
・海外で感染した1人が成田から八王子の自宅に帰宅したケース(図版)
・致死率60%(インドネシア等での鳥インフルエンザ・データによる)
・1人の感染者からパンディミックが発生し2週間で関東全域が感染地域となる
・食糧備蓄は最低2週間、出来れば4週間分 (1人あたり)
→シリアル食品やフルーツ缶詰なども良い
・飛沫感染ゆえ、対人接触の回避が何より重要
・市販のマスクの有効性は限定的だが必要
→30-50枚程度備蓄する。医療向けマスクで実績ある3M社の例はこちら
図版は国立感染症研究所、感染症情報センターより
WEDGE2008年12月号より 引用加筆
公衆衛生対策に求められる「コミュニケーション・ストラテジー」
――John Kobayashi氏(国立感染症研究所FETPアドバイザー)に聞く
医学書院、医学界新聞、第2559号 2003年11月10日 より抜粋
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2559dir/n2559_02.htm#00
バイオテロやSARSをはじめとする感染症の発生など,健康に対する新たな脅威への効果的な公衆衛生対策が議論されている。その課題のひとつと考えられている,「情報戦略」の問題について,国立感染症研究所感染症情報センターの実地臨床疫学プログラム(Field Epidemiology Training Program=FETP)では,米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention=CDC)や,米国ワシントン州健康局において公衆衛生対策を行なってきた経験を持つJohn Kobayashi氏による,教育の機会が与えられているという。「情報の戦略的な提供(コミュニケーション・ストラテジー)」に主眼を置いた公衆衛生対策の重要性を強調するKobayashi氏に,日米の感染症対策の現状に詳しい五味晴美氏がインタビューした。
まとめると
・毎日12時に情報をアップデートしてプレスカンファレンスを行ない,新しい情報を流す。
・ 3つの短い文章を作る。シンプルで短い言葉はわかりやすく効果的である。
・自分がコントロールできないようなものに遭遇した時には,とてもリスクが大きいと感じる。
→ 米国ではウエストナイルウイルスの問題よりも,喫煙や飲酒の問題のほうが実際には健康に与える影響が大きい。しかし,人々が恐いと思うのは,自分がコントロールできないウエストナイルウイルスのほうだ。
・「肯定的」でかつ「個人的」なメッセージが効果的。
→ 「これをすれば死にますよ」というメッセージより「これをすれば健康になります」というメッセージのほうにより反応する。
→「これがいいので,あなたもやりなさい」というメッセージより「私はこれがいいと思うので,私の子どもにはこうしています」メッセージを自分個人のもののようにして伝えると効果的
アメリカでのニュースビデオ
以前紹介した「クーガー・エース」の海難事故ビデオMSNBC(アメリカ)は現在も再生可能です。 こちらをクリックし、さらに事故映像をクリックすると「クーガー・エース」のニュースに引き続き「豚インフルエンザ」の最新ニュースを見ることが出来ます。当事国だけにニュースは深刻です。



毎日新聞 2009年4月27日
【メキシコ市・庭田学】豚インフルエンザの感染・死亡例が拡大しているメキシコのコルドバ保健相は25日、最初に症例が確認された女性患者(既に死亡)と接触した45人が、ウイルスに感染していたことを明らかにした。いずれも症状は軽かったが、ウイルスの感染力の強さを示している。
記者会見したコルドバ保健相によると、4月13日に確認された最初の患者は、南部オアハカ州の女性。症状は重篤で死亡したため、本格的な調査を開始。女性と接触した人は多く、45人の感染が判明した。しかし、この女性が今回の流行の最初のケースかどうかは不明という。
一方、メキシコ市の日本大使館は24日夜、緊急対策本部を設置。豚インフルエンザに関する情報収集とともに、ホームページや電子メールで在留邦人に情報提供を行っている。メキシコの在留邦人は約6600人。
毎日新聞 2009年4月26日
豚インフルエンザと疑われる感染例は26日、フランスやスペイン、イスラエル、ニュージーランドで報告され、世界的な広がりを見せ始めた。いずれもメキシコから帰国した人ばかりで、衛生当局がウイルス検査を進めている。メキシコでは25日、感染が疑われる死者が81人に増加、米国でも感染が拡大している。
メキシコのコルドバ保健相は25日、記者会見し、同日までの豚インフルエンザとみられる感染者数は1324人、死者数は81人と発表した。死者のうち死因を豚インフルエンザと確定した人数は20人で、前日と同じ。
米疾病対策センター(CDC)は同日、新たに中西部カンザス州で2人、西部カリフォルニア州で1人の豚インフルエンザ感染を確認し、感染者が計11人になったと発表した。メキシコと国境を接する州以外にも患者の所在地が広がり、感染拡大への懸念が高まっている。
一方、ニューヨーク市保健当局も同日、同市クイーンズ区の私立中等学校の生徒8人から、豚インフルエンザと疑われるウイルスを検出したと発表した。CDCがウイルス検査をしている。この学校にメキシコから最近帰国した生徒が1人おり、他にも発熱など症状を訴える生徒がいることから、集団感染も疑われている。
こうした中、米国のギブス大統領報道官は26日、NBCテレビに対し、「我々は適切な予防策を取っている。今はパニックになる時ではない」と語った。
米国以外でも、メキシコからの帰国者を中心に感染の疑われる人が相次いで発覚している。
ニュージーランドのライオール保健相は26日、メキシコに3週間滞在し、25日に帰国した高校生10人が豚インフルエンザに感染した疑いがあると発表した。A型インフルエンザ検査で陽性だったが、豚インフルエンザかどうかは今後調べる。AFP通信などが伝えた。
さらにスペインで3人、仏で4人が豚インフルエンザに感染している疑いがあることも26日、分かった。いずれもメキシコから帰国した旅行者で、両国はこれらの人々を隔離するなどして確認を急いでいる。
AFP通信などによると、スペインのケースはいずれも同国国民で、数日前に帰国したという。
26日付の仏紙の取材に応じた仏保健省の担当者は同国の事例について、「あくまで感染の疑いの段階」とした。
イスラエルでも、メキシコから帰国し、感染した疑いのある男性1人が入院した。【パリ福原直樹、ニューヨーク小倉孝保、ロサンゼルス吉富裕倫】
読売新聞 4月27日
メキシコ、米国で広がる豚インフルエンザをめぐっては、世界保健機関(WHO)が25日、「緊急事態」と認定する一方、警戒レベルの引き上げを見送り、「脅威」の評価に揺れが見られる。
発生地メキシコでも航空機が通常通り発着するなど、「封じ込め」は必ずしも徹底していない。その分、日本としては水際でのウイルス上陸阻止が重要だ。
メキシコで25日発令された「非常事態宣言」は、移動の自由など国民の権利を一部制限してでも、ウイルス「封じ込め」にかける政府の決意を示した。「深刻な事態だが、ともに乗り越えよう」と訴えたカルデロン大統領の言葉には悲壮感が漂っていた。
しかし、26日も、米国やグアテマラとの国境では通行制限などの措置は取られていない。メキシコ市国際空港では、乗客に質問票が配られ、発熱や頭痛などインフルエンザ特有の症状がある人に旅行を取りやめるよう当局が求めているが、強制的に旅行を中止させたといった報告は1件もなく、ウイルス拡散防止では甘さが目立つ。陸や空からの人の出入りを容認していることについて、コルドバ保健相は、「WHOから国境閉鎖の勧告はない」と述べ、今後の対応もWHOの見解次第という立場だ。
メキシコ市当局は24日から、レストランやバーを巡回し、10日間の営業自粛を呼びかけている。だが、エブラルド市長によると、まだ3割は通常通り営業を続けている。
メキシコ市内のカトリック教会は25日、当面ミサを開かないことを決めたが、教会への信者の出入りまで禁じる予定はない。
一方、メキシコからのウイルス流入を受けた側の米国。米疾病対策センター(CDC)幹部は25日の記者会見で、「広い地域で豚インフルエンザ感染が広がっており、封じ込めることはできない」と、封じ込めは手遅れとの本音を語った。(リオデジャネイロ 小寺以作、科学部 高田真之、社会部 小林直貴)
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
毎日新聞 4月27日
世界保健機関(WHO)は25日、豚インフルエンザ問題について「より多くの情報が必要」として、警戒レベルを「3」に据え置いた。現時点では不明となっている感染経路などの解明を急ぐ方針だ。死者が81人に達したメキシコでは、豚インフルエンザ以外の複数のインフルエンザウイルスも広がっているとの情報もあり、関係当局は感染拡大防止と実態究明に懸命な努力を続けている。【関東晋慈、ジュネーブ澤田克己、メキシコ市・庭田学】
WHOのチャン事務局長は25日の緊急委員会開催前の会見で、「パンデミック(世界的大流行)を引き起こす潜在的な力を持っている」と警戒感を示したが、同時に「現時点での疫学的証拠からはパンデミックを起こすと明言はできない」と指摘。緊急委も約3時間の協議の末、「より多くの情報が必要」と警戒レベルを3に据え置いた。
WHOのインフルエンザ準備計画は、フェーズ4への引き上げ条件として(1)感染経路や地域的広がり(2)症状の重さ(3)ウイルスの遺伝子情報−−などの検討が必要と定めている。現時点では、感染経路に不明な点もあるほか、フェーズ4の持つ国際的影響の大きさを念頭に置いている可能性もありそうだ。
WHOの判断について、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、患者の重症度などの疫学データや、得られたウイルスの遺伝子解析結果の組み合わせなどの情報が不足しているのでは、と指摘する。
◇「封じ込めは不可能」治療薬に効果、注意喚起にとどめる−−米当局
一方、米疾病対策センター(CDC)は25日の会見で「もっと多くの患者が出てくることが予測される。ウイルスの封じ込めは不可能だ」と述べた。
これまでに米国で確認された19人の感染例や感染の疑いのケースを見ると、メキシコとの国境地帯の住民やメキシコを訪問した人に多く現れており、3月末に流行が始まったメキシコから徐々にウイルスが広まってきた可能性が高い。
ただ、米国では発症者が少ない上、タミフルやリレンザといったインフルエンザ治療薬などが一定の効果を上げた。全員が回復したか軽症で済んだことから、調査を優先させている状況で、CDCはメキシコへの旅行を控えるよう呼びかけることはなく、手洗いの励行や病人に近付かないようにすることなど感染症対策の一般的な注意喚起にとどめた。
CDCは24日の会見で、メキシコ保健局から、メキシコ国内で豚インフルエンザウイルス以外の複数のインフルエンザウイルスが広まっているとの情報を得たことを明かし、「どの症状が豚インフルエンザウイルスによって引き起こされたのか、あるいは両方のウイルスに感染したのかを解明することが重要」と述べている。
◇メキシコで際立つ死者、重篤患者 20〜50歳、症状一気に悪化−−「過密都市・治療の遅れ」指摘も
「なぜメキシコだけで死者が出るのか」。メキシコのコルドバ保健相は25日の記者会見で、米国で発症した患者の症状がメキシコと違うことについて、謎が多いことを認めた。
保健相は「重篤な患者が20〜50歳であることを懸念している。通常、この年齢層は病気にかかりにくい。調べなければならないことがたくさんある」と話した。1918年のスペイン風邪では、同じ年齢層に多くの死者が出たことを念頭に置いたものだ。
メキシコの患者の初期症状は、普通のインフルエンザと変わらない。39度の高熱やせき、筋肉・関節痛などの症状が出るという。ただ、下痢や嘔吐(おうと)が通常より重く、症状が一気に悪化して重い肺炎になり、生命の危険にさらされるケースが相次いでいるという。
これに対し、米国では感染者19人のうち入院したのは2人だけ。全員が回復したか快方に向かっている。入院した2人のうち米カリフォルニア州の女性患者(41)は、下痢や嘔吐も含めた重い症状が約10日間続いたが、自己免疫疾患のあった患者だった。もう1人の入院女性患者(35)もすでに回復。3月末に40・2度の高熱を出した9歳の少女は、抗ヒスタミン剤やペニシリンの投与を受け、通院で治った。
メキシコの一部国民の栄養状態が悪い点や、貧困層の医療機関や薬へのアクセスが困難なことが状況を悪化させている、という指摘もある。
メキシコで最も死者が多いのは首都メキシコ市。インフルエンザに詳しい外岡立人・元小樽市保健所長は「人口約2000万人の過密都市で、集団感染しやすい条件といえる」と分析する。外岡氏は「軽症者が見逃されている可能性がある。その結果、致死率が高くなっている」と推測する。
また、押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「米国は積極的に早期発見して軽症にとどまっているのかもしれない。メキシコは受診した人だけを把握しているのではないか」と、両国の感染症対策の違いを指摘している。
●市原のコメント
今回のWHOやCDCの対応を報道で見る限り、上記の「情報の戦略的な提供(コミュニケーション・ストラテジー)」は生かされていないように感じます。
経済活動優先、とりあえず様子を見る、一般人はパニックになり易い(科学的根拠はありません)などの理由付けで情報開示が不足していると感じます。
しかしこうした対応は、「信頼とコミュニケーション」を悪い方向に誘導し、結果として「致命的な手遅れ」を招く恐れがあります。
John Kobayashi氏(アメリカ国立感染症研究所FETPアドバイザー)が言うように、情報提供の姿勢と中身が大切です。
・毎日12時に情報をアップデートしてプレスカンファレンスを行ない,新しい情報を流す。
・ 3つの短い文章を作る。シンプルで短い言葉はわかりやすく効果的である。
毎日新聞 2009年4月28日
【ジュネーブ澤田克己】豚インフルエンザのヒトへの感染が世界的に拡大している問題で、世界保健機関(WHO)は27日、新型インフルエンザの警戒レベルについて、現在の「フェーズ3」から「フェーズ4」に引き上げた。
同日発表した声明の中でチャン事務局長は「世界的大流行(パンデミック)の可能性は増しているが、避けられないわけではない」とし、各国に冷静な対応を呼びかけている。
対策についてWHOは、世界的な拡大を考慮すれば「封じ込めは現実的ではなく、感染の軽減策に焦点が当てられるべきだ」とした。
具体的には国境封鎖や旅行の規制などは行わないよう各国に勧告した。むしろ、病気とみられる人の旅行は遅らせ、国際旅行の後に症状が進行している人は治療を受けるのが賢明とした。
また、WHOは、季節性インフルエンザに対するワクチンの生産は「当面は継続すべきだ」とし、今回の豚インフルエンザのワクチン製造で、季節性インフルエンザワクチンの製造が阻害されないよう配慮を求めた。今後、WHOは今回のワクチンの製造方法などを確立するとしている。
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
毎日新聞 4月28日
◇フェーズ3、対策の強制力なし
メキシコでの死者が100人を超え、欧州や中東などにも拡大が疑われる豚インフルエンザ。世界保健機関(WHO)が警戒レベル「フェーズ4」あるいは「フェーズ5」を宣言すると、政府の行動計画は第1段階に引き上げられる。麻生太郎首相は27日、「危機管理上の重要課題」と対策を指示したが、「フェーズ3」では法的強制力はなく、季節性インフルエンザの枠内の対応しか取れないのが現状だ。海外に駐在員がいる日本企業もWHOの判断を不安げに見守る。
政府が力を注いでいるのは、水際対策と国内監視の強化だ。感染者は世界に広がりつつあるが、多数の死者が出ているのはメキシコだけで、同国からのウイルス侵入阻止に対策をほぼ絞っている。
29日以降の同国からの直行便は、乗客を機内に乗せたまま検疫官がサーモグラフィーなどで健康状態をチェック。有症者がいなくても機内検疫をするのは異例だ。検疫所で帰国者の連絡先を聞き、10日間ほど保健所が電話で健康状態を確認する経過観察も始める。既に帰国した人の追跡は、医療機関からの報告と厚生労働省が設けた電話相談が頼みの綱だ。医療機関には近く、重症肺炎や原因不明の死亡例なども含め報告を求める通知を出す。
一方で対策の限界も見えつつある。感染が疑われる帰国者が見つかった場合、豚インフルエンザが新型と認められていれば、感染症法や行動計画に基づき隔離措置が取れるが、現時点では任意受診を勧めるしかない。同じ機内にいた人は、行動計画第1段階に移行後は空港近くのホテルなどに10日間ほど停留させることになっているが、これもできない。
成田空港検疫所の検疫官約50人は、注意呼びかけや到着客への対応に追われている。29日からの機内検疫は乗客への強制力はないが総務課は「拒否される事態は想定していない。あくまで協力をお願いする」と話す。
関西空港検疫所は、メキシコ滞在者の健康状態質問票の記入や、症状が疑われる場合は簡易検査をする方針だが、現段階では検査は任意で強制力はない。検疫所は「状況が変わらない限り、この体制を続ける」と話す。
日本企業も、フェーズ3での対応が決まっていないのが現状だ。
伊藤忠商事は、中国などで03年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)を受け、「新型インフルエンザ対策マニュアル」を策定、鳥インフルエンザ問題などを受け昨年改定した。フェーズ4以上になった場合は緊急性が高いと判断し、海外駐在員らに危険国からの出国などを求めることが決まっているが、フェーズ3での危険性の判断は明確に決まっていない。
ハウス食品は1月、危機対応マニュアル「新型インフルエンザへの対応」を決めたが、フェーズ4以上に指定した段階で、社長をトップに危機対策チームを招集し対応を協議することが柱。フェーズ3段階では対応策は決まっていないという。【清水健二、大塚卓也】
◇国内豚検査も体制強化方針−−農水省
豚インフルエンザの人への感染問題で、農林水産省の佐藤正典官房長は27日、国内の豚に対する健康状態の検査体制を強化する方針を明らかにした。05〜07年度には15〜20都府県で年間約200頭が検査されたが、これを全都道府県で実施し、検査頭数も増やすよう都道府県に呼びかける。【太田圭介】
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■専門家に聞く
◇「大流行」前提に対策を/スペイン風邪発生時に酷似
世界で感染が拡大する豚インフルエンザは今後どのような被害を生むのか。ウイルスの感染力と毒性の強さについて、専門家の意見を聞いた。
押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「感染の拡大状況だけを見れば、(最高の警戒レベルで新型インフルエンザが一般社会に急速に拡大する)フェーズ6のパンデミック(世界的大流行)になっている」と感染拡大のスピードに注目。「日本にもウイルスが入ってきているかもしれない。確認されるまでは冷静に行動しなければならないが、パンデミックになることを前提に対策をとることが必要だ」と指摘。また、米国が非常事態宣言に踏み切った点を評価し「日本政府が(フェーズを引き上げる)WHOの宣言を待っているとすれば逆に間違いだ」と迅速な対応を促した。
今回の豚インフルエンザは、どの程度の脅威なのか。押谷教授は「感染は今後も間違いなく拡大する。その結果、どの程度の被害や致死率になるかが問題。メキシコの致死率は高いが、実際の感染者数がもっと多いためかもしれない」と話す。
1918年に世界中で猛威を振るったスペイン風邪に詳しい速水融(あきら)・慶応大名誉教授(歴史人口学)は「現状はスペイン風邪発生の状況とよく似ている」と指摘する。スペイン風邪は3月に米国で発生したとされ、初期にはほとんど死者が出なかった。5月にウイルスが上陸した日本では当初、死者も出なかったが、9月に欧州で、10月に日本でも死者が出た。速水氏は「夏以降に世界のどこかでウイルスが毒性の強いものに変異したと言われている。当時と比べれば世界の感染症の監視体制は発達している。その体制を生かし、警戒を続けることが必要だ」と話す。【関東晋慈、江口一】
毎日新聞、4月28日
豚インフルエンザの世界各地への流行の広がりで注目される「新型インフルエンザ」。症状や予防法など基礎知識をまとめた。
◇ Q 新型インフルエンザとは何ですか?
A 動物のインフルエンザウイルスが人に感染し、人の体内で増殖できるように変化した後、人から人へと効率よく感染できるようになった未知のウイルスによって発症するインフルエンザです。現在、流行しているインフルエンザとは異なり、人類のほとんどが新しいウイルスに対する免疫を持たないため、簡単に感染しやすく、世界的大流行(パンデミック)につながる恐れがあると警戒されています。今回は豚インフルエンザウイルスの感染が広がり、世界保健機関(WHO)が警戒レベルを引き上げました。想定されていた鳥インフルエンザから変異した新型インフルエンザとは異なりますが、日本政府は新型インフルエンザと認定しました。現代社会は、都市への人口集中、大量輸送交通機関の発達などによって、短期間で世界中にまん延する可能性が高く、WHOや各国政府は、新型インフルエンザの発生に備えた対策を進めてきました。
◇ Q 警戒レベル引き上げを受け、どのように行動すべきですか?
A 現段階では、日本国内での感染者は確認されておらず、パニックになる必要はありません。厚生労働省のホームページ(http://www‐bm.mhlw.go.jp/index.html)などから正確な情報を入手して、落ち着いて行動してください。
◇ Q 新型インフルエンザは、どんな症状が出るのですか?
A 高熱、頭痛、関節痛などの全身症状のほか、のどの痛みや鼻水など風邪のような症状が出ます。気管支炎、肺炎などが併せて起こり重症化することもあります。重症患者の発生割合は、ウイルスの毒性によって異なります。
◇ Q 新型インフルエンザは、どのように感染するのですか?
A 主な感染経路は飛沫(ひまつ)感染と接触感染です。くしゃみやせきによって、唾液(だえき)や鼻水の細かい粒を吸い込むことと、汚染された手で鼻や目を触ることで感染すると考えられています。
◇ Q 新型インフルエンザの感染予防策を教えてください。
A 厚労省が通常のインフルエンザに有効として挙げている予防策は以下の点です。
▽外出後には手洗い、うがいをする▽手洗いはせっけんを用いて15秒以上。水を十分にふき取る▽流行地への渡航、人ごみや繁華街への不要不急な外出をしない▽十分に休養をとり、体力や抵抗力を高め、バランスよく栄養をとる。
新型が出現した場合も、同様の予防策に努めることが重要です。
また他人に感染させないためにも、せきやくしゃみの症状がある人は、必ずマスクをつける「せきエチケット」の徹底を呼びかけています。
◇ Q 発熱など、発症が疑われる場合はどうすればいいですか?
A 厚労省は、メキシコや米国から帰国した人などの問い合わせに応じる電話相談窓口(03・3501・9031)を設置しています。各地の保健所なども問い合わせに応じますので、指示に従って指定された医療機関で受診してください。
◇ Q 豚肉を食べても大丈夫ですか?
A 豚肉や豚肉加工品を食べても、感染しません。インフルエンザウイルスは熱に弱く、通常の調理をすれば死滅するからです。WHOのホームページには、豚インフルエンザウイルスは70度で調理すれば死滅すると書かれています。また、万が一ウイルスが付着していても、インフルエンザウイルスは酸に弱いため、胃酸によって活動できなくなるためです。
◇ Q 今回の豚インフルエンザに感染した場合の治療法は?
A WHOなどによると、インフルエンザ治療薬のタミフル(一般名リン酸オセルタミビル)とリレンザ(同ザナミビル)は効果があるとされます。シンメトレル(同アマンタジン)は耐性が確認され、効果が期待できません。
◇ Q 新型インフルエンザの発生は以前もあったのでしょうか?
A 過去に発生した新型インフルエンザには、世界で約4000万人、日本で約39万人が死亡したスペイン風邪(1918年)や、アジア風邪(57年)、香港風邪(68年)があります。10〜40年周期で発生するとされ、警戒を求める声が高まっていました。【江口一、永山悦子】
読売新聞 4月29日
メキシコを中心に新型インフルエンザが世界各地に広がる中、同国だけでなぜ犠牲者が増えるのか、専門家の間で謎が深まっている。
同国の死者数(28日午後10時半現在)は152人に上る一方、同国以外では犠牲者が出ていない。疑い例を含む感染者数(同)は1995人で、豪州の88人、ニュージーランドの54人に比べて突出する。計算上の死亡率は7・6%に達する。
AP通信などは〈1〉ウイルスの種類が違う〈2〉栄養不足〈3〉水不足〈4〉大気汚染〈5〉医療体制の不備――を「考えられる理由」として挙げるが、すべて憶測にすぎない。
「感染者は報告よりもずっと多いのではないか。軽症の場合、医療機関を受診しない人も多い」と、東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は指摘する。感染者数が10倍なら致死率は10分の1に下がる。メキシコ以外の感染者のほとんどが、同国の訪問者なのも、同国内の感染の広がりを裏付ける。
メキシコでの死者の多くが、通常健康な20〜40歳代の一方、米国では幅広い年代の感染者が報告されているのも謎を深める。
誰も免疫を持たない新型インフルエンザは、抵抗力が強い若者ほど、免疫が過剰反応して逆に犠牲になりやすいという意見もあるが、国立国際医療センターの工藤宏一郎・国際疾病センター長は「強毒性と弱毒性の複数のウイルスがあって、メキシコ以外では、弱毒タイプだけが流行しているのかもしれない」とみる。
米疾病対策センター(CDC)の専門家は、犠牲者の一部は持病が原因の可能性もあると指摘する。
ともあれ、現地の詳しい状況が分からない中で、議論しても、結論は出ない。
CDCのリチャード・ベッサー所長代行は、28日の記者会見で「評価は時期尚早。メキシコは米国より深刻に見えるが、全体の一部を見ているに過ぎない。楽観できない」と、今後、米国などでも深刻な症例が増えるとの見方を示した。
毎日新聞 2009年4月29日
世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的大流行(パンデミック)に備える警戒レベルを初めて「フェーズ4」に引き上げた。WHOによると、「4」は大流行に移行する可能性がある段階だ。この事態をどう受け止めればいいのか。感染の疑いがある場合、どう対処したらいいのか。【江口一、関東晋慈】
◇フェーズ4にはどんな意味があるのか
今回のWHOの措置について、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、初めて感染者が出たメキシコや北米に加え、欧州やオセアニアにまで感染が広がったことで「パンデミックになりうる新しい型のウイルスと判断したため」とみている。
WHOがフェーズを4に引き上げたことで、政府は感染症法に基づき新型インフルエンザとして対策行動計画に沿った対応を取ることができる。
今回の引き上げについてWHOは「強い警告をすることで、各国が拡大を防ぐための対策を取れるようになる」と説明。岡部センター長も「確かにパンデミックにつながる可能性があり、フェーズが引き上げられたが、行政にとっては、発生の監視など積極的に対応する一つの道筋が見える」と話している。
◇政府が想定していた新型インフルエンザとはどう違うのか
政府が想定していた新型インフルエンザは、強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1型)から変異するものだった。行動計画では1918年にパンデミックとなったスペイン風邪並みの致死率(2%)を想定、国内の死者数は64万人としていた。
鳥インフルエンザを巡っては、インドネシアで鶏から人への集団感染が発覚。事態を重く見たWHOが05年に警戒レベルを3に引き上げた経緯がある。
一方、今回政府が発生を宣言した新型インフルエンザは、H1N1型の豚インフルエンザから変異したもの。日本で毎冬流行する「Aソ連型」と同じ型で、祖先は同じとされる。H1N1型の豚インフルエンザも過去に人に感染したことがあり、弱毒性とされている。今回の感染者はメキシコで多くの死者が出ているものの、詳しい原因は不明で、米国など他国の患者はほとんどが軽症とされる。
岡部センター長は「メキシコの致死率が高い理由を知りたいところだが、他国では重症者がほとんど見られない。これ以上目立った被害が出ないままウイルスの毒性が分からず、1カ月で終息する可能性もある。過剰に心配する必要はない」と冷静な対応を求める。
◇感染が疑われるのはどんなケースか
新型インフルエンザの患者の症状は、季節インフルエンザと同様、急な発熱やせき、のどの痛み、頭痛、体の痛みなどだ。だが現段階では国内で感染が広がっていないため、こうした症状の人がすべて疑われるわけではない。疑われるのはメキシコなど発生国から帰国して10日以内に症状がある場合だ。
新型インフルエンザはA、B、C型の3種類あるインフルエンザウイルスのうちのA型。患者は簡易診断キットで口の粘液を採取し、A型かどうかを医療機関で判断する。検査時間は約15分。この段階ではA型のうち従来の季節性なのか新型なのかは判別できない。
◇A型と診断されたら次は、どんな検査をするのか
採取した検体が陽性なら、都道府県などの地方衛生研究所や国立感染症研究所に送られ、遺伝子解析で詳しく検査される。遺伝子が新型と一致すれば、感染が確定する。遺伝子の検査は1日で終了するという。
検査をするには、実際に新型に感染した患者からウイルスを採取する必要がある。だが国内には現在患者がおらず、ウイルスを入手できないため、国立感染症研究所が米疾病対策センター(CDC)などから取り寄せる手続きを進めている。その間に疑わしい患者が出た場合、既に明らかになっている新型ウイルスの遺伝子情報を基に仮検査を進める。最終的な確定はウイルス入手後になるという。
◇感染が確定すると、どういう措置、治療がとられるのか
感染症法に基づき隔離措置がとられ、抗インフルエンザウイルス薬の投与などの治療が始まる。また、家族など患者と接触した人をリストアップし、健康観察を10日間続けて感染の有無を調べる。
CDCでも新型への感染例で治療薬のタミフルやリレンザの効果が確認されており、岡部センター長は「このままウイルスが変異しなければいいが、今後どう変わるかは分からない。他の感染症を含めて普段の体調管理を心がけ、心配なら医療機関に相談してほしい」と呼びかけている。
◇予防ワクチンの効き目はどうか
新型に変異する前の豚インフルエンザと同じH1N1型のワクチンはあるが、人型と豚型のウイルスの違いから効果は期待できない。WHOによると、新型をもとにしたワクチン開発には今後4〜6カ月かかるという。
2009年4月29日 12時52分 更新:4月29日 13時42分
【ニューヨーク小倉孝保】新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)ウイルス感染が世界的に広がっている問題で、新たにコスタリカで28日、1人の感染が確認され、確認例は中米やアジア・オセアニア、中東など計8カ国、計108人に上った。韓国でも米国やメキシコから帰国した5人に感染の疑いがあるなど、さらに拡大の恐れがある。
このうち、米国では感染が確認された人が66人に増加。ニューヨーク市の保健当局は同日、40人以上の感染が確認されたクイーンズ区の中等学校(中・高校生)とは別に、新たにウイルス感染した可能性がある者が計20人いると発表するなど、感染は同区だけでなくマンハッタン、ブルックリンなど同市各区へ拡大している可能性が高い。
一方、メキシコで新型インフルエンザによるとみられる死者は同日、159人に増加。感染が確認されたか、感染が疑われる患者は2498人に上った。
2009年04月28日 21:05 発信地:ジュネーブ/スイス
【4月28日 AFP】豚インフルエンザ感染の拡大に伴い、各国が空港での検疫を強化する中、世界保健機関(World Health Organisation、WHO)は28日、感染した搭乗客を洗い出そうとしても、空港での検疫に効果はないと指摘した。
WHOのグレゴリー・ハートル(Gregory Hartl)広報担当は「もしも感染していたり、感染源に接触したとしても、空港にいる時点で症状は現れていないだろう。空港での検査、検疫は役に立たない。搭乗客の体温監視も、潜伏期の患者を見つけ出すことはできない」と、報道陣を前に述べた。(c)AFP
東京新聞 4月30日
【ジュネーブ29日共同】新型インフルエンザの拡大を受け、世界保健機関(WHO)は29日、世界的大流行(パンデミック)が「差し迫っている」と表明、警戒水準(フェーズ)を「4」から初めて「5」に引き上げた。最悪である「6」のパンデミックに極めて近い状況。国際的な人の移動などの制限が一層強化され、経済、社会の各分野に深刻な影響が広がるのは必至だが、WHOは国際社会に強い警告を発する必要があると判断した。
WHOは警戒水準を27日に「3」から「4」に引き上げたばかり。わずか2日間で再引き上げを迫られた。WHOのマーガレット・チャン事務局長が29日深夜(日本時間30日早朝)緊急記者会見を開き、引き上げを発表した。
チャン事務局長はパンデミックに発展すれば「人類全体が危機にさらされる」と強調。再引き上げは、感染の中心となったメキシコに加えて米国でも「地域レベルで持続的な人から人への感染」が確認されたためだと説明した。その上で事務局長はワクチン増産を求めるとともに、各国政府に「大流行への準備計画を実行に移し、高度の警戒態勢を続けるべきだ」と訴えた。
メキシコを中心に広がった新型インフルエンザは29日までに北米や中米、欧州、中東、オセアニアの計10カ国に拡大。ウイルスが国境を越える勢いは衰えをまったくみせていない。29日には米テキサス州に滞在中のメキシコ人幼児の死亡が判明、メキシコ以外で初の死者となった。
日本政府は28日に麻生太郎首相を本部長とする対策本部を設置し、検疫強化や国内侵入の防止に着手しているが、一層の対策強化を迫られることになった。
20世紀には3回のインフルエンザの世界的流行があり、1918年発生の「スペイン風邪」では世界で約4000万人が死亡した。
【ジュネーブ澤田克己】感染が広がる新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的大流行(パンデミック)への警戒レベル引き上げを討議した世界保健機関(WHO)緊急委員会委員の田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は28日、記者会見し、今回のウイルスは「弱毒性」との見解を示した。強毒性のH5N1型鳥インフルエンザが新型に変異した場合に比べ「それほど大きな被害は出ない」とみられ、「全く同じ対策を機械的に取るのは妥当でない」と述べた。
田代氏は毒性について「今後、遺伝子の突然変異で病原性を獲得しないという保証はない」とした。そのうえで、遺伝子解析の「予備的データ」の結果として現段階で「強い病原性を示唆するような遺伝子はない」と「弱毒性」との認識を示した。
被害については、現在の毒性が変わらなければ、パンデミックを起こしても、約200万人が死亡した57年の「アジア風邪の規模かもしれない」とした。
数千万人規模の死者が想定される強毒性H5N1型と「全く横並びに判断していいものではない」と話した。
致死率などについては、疫学的調査が終わっていないため「実際の数字は分からない」と説明した。H5N1型に比べ「健康被害や社会的影響は大きく異なる。全く同じ対策を機械的に取ることは必ずしも妥当ではない。フレキシブル(柔軟)に考えていく必要がある」と述べた。
日本の対策について「少しナーバスになり過ぎているところがあるかもしれないが、後手後手になって大きな被害が出るよりは、やり過ぎの方がいいかもしれない」とし、発見の遅れに憂慮を示した。
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■解説
◇変異の恐れ、警戒継続を
新型インフルエンザウイルスが、毎年流行するインフルエンザと同じ弱毒性との見解が示された。だが世界中の大半の人が経験したことがないウイルスのため免疫がない。さらにインフルエンザウイルスは変異しやすく、流行中に強毒性に変わることも考えられる。パンデミックへの警戒は依然怠れない。
弱毒性ウイルスとは、呼吸器感染にとどまり強毒性鳥インフルエンザで懸念されている全身感染を起こさない▽感染者に生体防御の過剰反応(サイトカインストーム)を起こさない−−とされる。新型変異前の豚インフルエンザウイルスはもともと弱毒性と知られていた。変異し人から人に感染するようになったウイルスの毒性は不明だったが、遺伝子レベルで「弱毒性」と今回初めて指摘された。
国立感染症研究所の田代真人氏によると、今回検出したウイルスのHAたんぱく(表面に突き出た突起)を遺伝子解析した結果、その中間部分にある塩基性アミノ酸が一つで人の呼吸器にしか感染しない構造だった。この塩基性アミノ酸が8〜10個に増えると全身感染する強毒性になる。
流行の拡大を防ぐため、政府が早期発見の体制を整える一方、個人もマスクの着用や手洗いなどを徹底し、感染症への備えを心がけることが大切だ。【関東晋慈】
毎日新聞しらべ 4月30日
スペイン風邪 (H1N1型)4000万人死亡(致死率2.0%) 1918年
アジア風邪(H2N2型)200万人(致死率0.5%) 1957年
香港風邪(H3N2型)100万人死亡(致死率0.5%)1968年
季節性インフルエンザ 日本で年間1万人前後 0.05%
朝日新聞 4月30日
世界保健機関(WHO)が警戒レベル「フェーズ5」を宣言し、新型の豚インフルエンザのパンデミック(世界的流行)懸念が高まった。このウイルスは弱毒型と見られると、国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長が28日明らかにした。
今後のウイルスの変化は予断を許さないが、かつて世界中で数千万人が死んだスペイン風邪のような事態は避けられる可能性が出てきた。しかし、これで安心することは決してできない。パンデミックの恐ろしさは、死者の多発に限らない。
WHO西太平洋地域事務局の葛西健(たけし)感染症対策官は「世界中で同時に患者が多発する。これがパンデミックの真の脅威だ」と話す。
患者が多数出ると、大震災時などと同様、医療資源が極端に不足する。また、入院不要の軽症でも、1週間程度は仕事や家事ができない。学校閉鎖は感染封じ込めには有効だが、子らに対応するため、健康な大人も仕事を休まなくてはならない。これらは、社会機能をまひさせてしまう。
軽症者の爆発的発生は、このような社会の混乱を世界中で引き起こす。パンデミックは「経済災害」であり、弱毒型でも脅威が減ったわけではない。国内へのウイルス流入や感染の広がりを抑える対策をゆるめてはならない。(編集委員・中村通子)
毎日新聞 5月1日
国立感染症研究所は30日、今回の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的大流行(パンデミック)による感染者数の状況を推定した。感染者数が今後増加しても、多くが軽症ですみ重症例は少ない可能性が高いとしている。
同研究所の岡部信彦・感染症情報センター長らは4月29日深夜、米疾病対策センター(CDC)やメキシコ、カナダ、イギリスなどによる世界保健機関(WHO)の電話会議に参加。米国ではほとんどの感染者が軽症で、毎年流行するインフルエンザと同じ気道症状にとどまり、タミフルなどの治療薬を投与しなくても回復しているという。また、メキシコの重症患者は、10代から特に50代が中心で、他の病気で服用している薬による免疫低下や体力が弱まっていることなどが原因とみられるという。
一方、ウイルスの性質について、米国の疫学調査から弱毒性と判断した。これらから、今後、軽症者が増加しても死者や重症者は一定数にとどまると推測。日本では感染者が確認されておらず、メキシコと米国での重症者と軽症者の現状と、今後の状況を推測するグラフも公表した。
岡部センター長は「牙をむいたような致死性の高いウイルスが国内に飛び込んでくるのとは違う。だが、過去の新型は罹患(りかん)率20〜40%で、季節性を超える規模のインフルエンザがやって来るかもしれない」と対策を求めた。【関東晋慈】
毎日新聞 5月1日
【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU)の行政府・欧州委員会の報道官は29日、世界的に感染が拡大している新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)について、「豚インフルエンザ」の呼称をやめ「新型インフルエンザ」と呼ぶよう提案した。経済不況下、「豚インフル」の呼称がEU域内の養豚・食肉産業に及ぼす風評被害を最小限に食い止めるためと説明している。オバマ米大統領も29日の会見では「H1N1インフルエンザウイルス」と正式名称で呼んでおり、一定の配慮をしているようだ。
欧州委が提案した理由は「ヒトからヒトへの感染であり、動物の病気であるとの誤解を避けるため」(報道官)で、現在の呼称では「産業への損害が甚大」と指摘している。
今回のインフルエンザの感染拡大を受け、中国やロシアなどはメキシコ・米国産の豚肉の輸入を禁止する措置を取った。EUは「豚肉は加熱すれば食べて大丈夫。禁輸の必要はない」(欧州委員会)との立場だ。
だがEU内部でも議長国チェコを含めた国が「呼称変更は混乱を招く」などとして「豚インフルエンザ」を使い続けており、EU内にも足並みの乱れが見られる。世界保健機関(WHO)は29日現在、「豚インフルエンザ」と呼んでいる。
◇ ◇ ◇
東京都食肉生活衛生同業組合・同食肉事業協同組合は28日、「『豚インフルエンザ』の呼称は不適切」と呼びかけた。
毎日新聞 5月1日
【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU)の行政府・欧州委員会の報道官は29日、世界的に感染が拡大している新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)について、「豚インフルエンザ」の呼称をやめ「新型インフルエンザ」と呼ぶよう提案した。経済不況下、「豚インフル」の呼称がEU域内の養豚・食肉産業に及ぼす風評被害を最小限に食い止めるためと説明している。オバマ米大統領も29日の会見では「H1N1インフルエンザウイルス」と正式名称で呼んでおり、一定の配慮をしているようだ。
欧州委が提案した理由は「ヒトからヒトへの感染であり、動物の病気であるとの誤解を避けるため」(報道官)で、現在の呼称では「産業への損害が甚大」と指摘している。
今回のインフルエンザの感染拡大を受け、中国やロシアなどはメキシコ・米国産の豚肉の輸入を禁止する措置を取った。EUは「豚肉は加熱すれば食べて大丈夫。禁輸の必要はない」(欧州委員会)との立場だ。
だがEU内部でも議長国チェコを含めた国が「呼称変更は混乱を招く」などとして「豚インフルエンザ」を使い続けており、EU内にも足並みの乱れが見られる。世界保健機関(WHO)は29日現在、「豚インフルエンザ」と呼んでいる。
◇ ◇ ◇
東京都食肉生活衛生同業組合・同食肉事業協同組合は28日、「『豚インフルエンザ』の呼称は不適切」と呼びかけた。
CNN 4月30日
世界中で感染拡大が判明する豚インフルエンザへの警戒が強まる中、米国では冬季に流行する通常の季節性インフルエンザでも年間3万6000人が死亡している実態を認識するべきだと、専門家が呼び掛けている。
ニューヨーク市ブロンクスにあるモンテフィオーレ医療センターのブライアン・キュリー博士によると、米国では毎年平均して約3万6000人が、通常のインフルエンザにより死亡。全世界ではその数は、推定で25─50万人に達するという。
また、死亡者の9割が65歳以上の高齢者で、インフルエンザをきっかけに持病が悪化しており、通常のインフルエンザが非難されるべきだと指摘している。
米疾病対策センター(CDC)の統計によると、通常のインフルエンザから引き起こされた合併症などによる死者は今年1月からだけで、1万3000人を超えている。また、1月1日から4月18日までの統計では、インフルエンザ関連の死者数が800人を下回った週はない。
キュリー博士は、多くの人々の死亡診断書には直接、インフルエンザとは書かれていないが、インフルエンザが死に関係していることは間違いないと話している。
豚インフルエンザの感染状況を確認しているロサンゼルス郡保健局のジョナサン・フィールディング博士も、「心配されるべき状態だが、過剰に警戒するほどでもない」「ロサンゼルス郡の面積や、メキシコ間での移動人数を考えれば、感染例がない方が驚きだ」と述べ、平静を保つよう呼び掛けている。
フィールディング博士によれば、CDCは同郡で28日までに、豚インフルエンザ感染例を10件確認しているが、通常のインフルエンザに関連した死者数は年間1000人を超えていると指摘。「もしも豚インフルエンザによる死者がでたとしても驚かない。通常の季節性のインフルエンザに近いパターンで広まっていると考えられる」と話している。
毎日新聞 5月2日
新型インフルエンザに感染している疑いがあった横浜市の男子高校生(17)は1日、ウイルス遺伝子検査の結果、新型でないと確認された。国内初の「感染疑い例」の扱いをめぐっては、厚生労働省と横浜市の間の連絡がぎくしゃくとし、国と自治体の危機管理の際の連携のまずさが浮き彫りとなった。また、感染か否かの確認作業そのものも手間取り、今後に課題を残した。【坂口裕彦、鈴木直、山衛守剛、木村健二、関東晋慈】
◇横浜市「厚労相先走り」
「緊急事態があった場合、私の判断で、何時であれ真夜中であれ、国民に一刻も早く正確な情報を伝えたい」。初の疑い例が出たとした1日未明の緊急記者会見について、舛添要一厚労相は同日朝、そう説明し、「迅速」な情報発信をアピールした。
ところが、そこでトラブルが生じた。
舛添氏が厚労官僚から高校生の情報を聞いたのは4月30日の午後11時過ぎ。それに伴い1日午前1時15分に記者会見を設定した。しかし、厚労省側は3回目の遺伝子検査の結果が解析不能だった点について横浜市に確認の電話をしたが、つながらない状態が続いた。このため記者会見は予定より20分遅れの1時35分にずれ込んだ。
舛添氏は会見で「危機管理の体をなしていない。こういう時は上に立つ者がリーダーシップを発揮しなければならない」と言い、横浜市の中田宏市長らを痛烈に批判した。
だが、横浜市側の言い分は異なる。市健康福祉局の説明では、市側が厚労省に一報を入れたのは30日午後9時ごろ。その際「疑い例」に相当するとの見解を聞き、双方で検査終了を待って同時発表を行う段取りを進めた。ところが、1日午前0時40分ごろの3回目の検査結果判明後に、テレビの速報テロップで情報が流れ、報道各社からの電話が殺到。厚労省側の電話に対応できなくなった。そのまま舛添氏が先に会見を開いたという。
疑いを否定した1日夕の厚労省発表を受け、中田市長は「今日は(舛添)大臣に振り回されたというのが正直な感想であります」と皮肉を込めて語った。
中田市長は、陽性診断が確定してから発表すべきだったとの考えを示唆し「(テロップが流れる)直前まで担当同士が話し合ってるわけですから。(大臣は)どたばた先走らないようにしないといけない」とくぎを刺した。
感染情報が増えてくれば、厚労省と自治体の間で再び混乱が生じかねない。舛添氏は「ホットラインを全首長と結んでおく必要」を説くが、神奈川県の松沢成文知事からも「厚労相の勇み足、フライング」との声が上がる。
◇検査手順に不備
「解析不能ということで、もう一度やるしかない」。1日未明の緊急会見。舛添厚労相は、感染を確認するための検査の不調ぶりに、いらだった様子を見せた。
疑い例となった高校生は、最初に行う簡易検査で新型が属するA型インフルエンザへの感染が確認された。その後、A型のうち季節性のA香港型として知られるH3N2型か、同じ季節性のAソ連型と新型の属するH1N1型かを調べる遺伝子検査を受けていた。横浜市の検査では明確な結果が出ていなかった。
なぜ、市の検査が不調だったのか。市に代わって遺伝子検査を行った国立感染症研究所(感染研)の岡部信彦・感染症情報センター長はまず「簡易検査のため医療機関が生徒から採取した検体(のどの粘液)に試薬が混ざり、遺伝子検査の精度を下げたと考えられる」と指摘する。緊急会見後に感染研は、再度検体を採取し、検査したがやはり「解析不能」だった。この点については「治療後(16時間程度の)時間がたっており、検査に必要なウイルス量が不足していたことも原因かもしれない」と説明する。
感染研で検体からウイルス遺伝子を増やし、再び遺伝子検査を行ったところ、Aソ連型と判明。厚労省は同日夕、新型への感染を否定する結果を発表した。
厚労省の担当者は「医療機関が検体を採取する際、簡易検査の分とは別に遺伝子検査用の検体を取っていれば、(市と感染研のいずれも検査の不調を)避けることができた。だが、通常は簡易検査で判明するA型を特定すれば治療ができるため、その作業を忘れてしまったのだろう」と最初の段階で2回採取すべきだったと話す。今後、遺伝子検査がスムーズに行えるよう、簡易検査の段階で検体を2回採取することを徹底させる通知を出すという。
朝日新聞 5月4日
【ワシントン=勝田敏彦、櫻井林太郎】米疾病対策センター(CDC)で予防接種と呼吸器疾患の責任者を務めるアン・シャキャット博士は3日の会見で、新型の豚インフルエンザの米国内の状況について「事態が好転している兆しがある」と述べた。同日のテレビ番組で米政府高官も相次いで同様の発言をしており、世界の感染者数が千に近づくなか、米政府が国内の流行のピークは過ぎたと見ていることが明らかになった。
同博士はその根拠として、メキシコでウイルスの活動が頭打ちになったように見えることと、今回のウイルスの遺伝子の特徴が、1918〜19年に世界で約4千万人が亡くなったとされるスペイン風邪の原因ウイルスの遺伝子と異なることを挙げた。同博士は「とはいうものの、気を緩めてはならない」と注意も呼びかけている。
CDCの3日のまとめによると、米国内の感染者は226人。前日から66人増えているが、同博士は「検査結果が遅れて出てきているためで、今後2、3日はこのような増加があるだろう」と述べ、それほど心配していないとの見方を示した。
また同博士は「私たちは秋に向けて備える必要がある」と述べ、季節性インフルエンザの流行が始まる秋ごろに「第2波」がある可能性があるとみて警戒を呼びかけた。
スペイン風邪では、18年6月ごろに小規模な第1波があり、それがいったん終息したあと、11月ごろに大規模な第2波が遅い、多数の死者が出ている。
一方、ナポリターノ国土安全保障長官やシベリウス厚生長官らは3日、米テレビの討論番組に相次いで出演し、やはり「事態が好転している兆しがある」と述べた。
世界保健機関(WHO)の3日のまとめでは、世界18カ国898人の感染が確認されている。
朝日新聞 5月5日
【サンパウロ=平山亜理】新型の豚インフルエンザが最初に発生したメキシコで、治療の最前線にいる国立呼吸器系疾患研究所付属病院(メキシコ市)の専門医、アンハラ・イゲラ感染症部長が3日、朝日新聞の電話インタビューに答え、発症後7日以内に治療を受けた人のほとんどは回復していると明らかにした。
イゲラ部長によると、死亡例の大半は、今回の新型インフルエンザの知識がないまま、症状が重くなるまで、ただの風邪だと思い、高額の負担につながる医療機関で受診せず、市販薬で治そうとした人たち。発症後15日間を過ぎるまで治療を受けなかった人の96%が死亡している。
今回の新型インフルエンザでは、メキシコにほとんどの死者が集中していることが最大のなぞとされてきた。専門医によるこうした証言は、低所得者層の医療へのアクセスの悪さが、特に流行初期の段階で高い死亡率につながった可能性を裏づけるものだ。
この病院は、転院も含めて新型インフル症例を国内最多規模で扱っている。これまでに新型インフルの疑いの濃い重症者が136人入院し、うち21人が死亡した。世界保健機関(WHO)の検査で、21人のうち5人はすでに新型インフルと確認された。
手遅れになってから受診したことによる死亡例は、メキシコ政府もまだ事態を認識していなかった3月下旬から4月上旬までが多かった。現在はインフルエンザに関する知識が広まった結果、初期症状が出てすぐ通院する人が増えたこともあり、ここ数日は死者は出ていないという。
入院した重症者136人でみると男性が74%、女性が26%と男性が多く、年齢は15歳以上64歳未満に集中していた。タクシー運転手や美容院従業員、医師や看護師ら、人と接する機会の多い職業の人が多い。また、公共交通機関を利用する傾向も高かった。
潜伏期間は個人差があるが、家族間などで感染時期が特定できるケースから推定すると、感染後3〜7日たって発症する。39度程度の高熱とともにせきや鼻水が出て、頭痛や筋肉痛、腹痛や下痢症状を訴える。緑か黄色のたん、場合によっては血の混ざったたんが出る。発症後72時間後ごろから、肺炎を併発して重症化、特に重い場合は多臓器不全を起こして死亡に至る例が多いという。
イゲラ部長は、発症して7日以内の抗ウイルス剤タミフル投与などの治療は明らかに有効だとした。ただし、心臓病や糖尿病など他の病気を患っている場合はタミフルが効かない例もみられたという。
一方、こうした情報のメキシコ政府による集約は後手に回った可能性もある。米疾病対策センター(CDC)の調査報告によると、メキシコ初の発症例は3月17日。保健省の担当部局が全国の病院に警告を出し、通常見られないような重症の肺炎例の報告を求めたのは、1カ月後の4月17日のことだった。
日経新聞 5月5日
【北京=尾崎実】中国の馬朝旭報道局長は5日の記者会見で、新型インフルエンザの感染が拡大しているカナダからの留学生25人について隔離措置を取っていることを明らかにした。「公衆衛生の安全を保証するため」としている。
馬局長によると、留学生らは2日夜、吉林省長春市に到着。同省当局が国境衛生検疫法などに基づいて市内のホテルに隔離し、1週間の医学観察を実施している。同省外事弁公室が3日、在中国カナダ大使館に今回の措置を連絡した。 (00:25)
毎日新聞 5月8日
新型インフルエンザ感染の可能性がないのに医療機関に診察を拒否されたとの相談が、東京都以外にも5県2政令市に寄せられていたことが7日、毎日新聞の調査で分かった。東京都への相談件数は7日朝までに計212件に達した。都内では都が説得しても診察を拒否し続けている病院もあり、厚生労働省は「国内未発生の段階では、発生国に行っていなければ診察して問題ない」として、医療機関に適切な対応を求めている。【内橋寿明、江畑佳明】
◇「保健所診断書持ってきて」
調査は7日、都道府県と政令市の新型インフルエンザ対策担当者に実施。診察拒否の相談があったのは東京都のほか、埼玉、千葉、滋賀、島根、高知の各県と横浜、神戸両市だった。東京都以外はいずれも数件だったが、東京都はこの問題が報道された5日以降で120件増えた。
東京都内では「(新型インフルエンザでないという)保健所の診断書を持ってきてほしい」と診察を断った医療機関があり、都が患者の連絡を受けて説得しているが、依然として拒否を続けているという。都は診察を拒んだ医療機関のリスト化も検討している。相談が報道された後も増えたことについては、都の担当者は「泣き寝入りしていた患者たちが、報道で知って連絡してきたのでは」と推測している。
横浜市では「診察してもらうのに、何カ所もの医療機関を回らなければならなかった」との相談があった。市は5日付で医師会と病院協会に対し、適切な対応を取るよう文書で要請したという。
島根県には6日夜までに、7件の相談が寄せられた。いずれも渡航歴がないのに、医療機関に発熱相談センターに行くよう求められたとの内容。
センターは、一般の医療機関で受診して構わないと説明したという。担当者は「『発熱相談』という名称なので、熱がある人の対応を一任してしまっていいと勘違いする医師がいるのではないか」と話す。
新型インフル
読売新聞 5月8日
世界中に感染が広がっている新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)について、高齢者の感染者が少ないことが注目を集めている。
「高齢者には何らかの免疫があるかもしれない」と指摘する専門家もいる。
米疾病対策センター(CDC)は6日、米国内で感染が確認された642人の患者のうち、58%が18歳未満の若者だったと発表した。通常の季節性インフルエンザでは、乳幼児や高齢者の感染者が多いだけに、新型インフルエンザでは、なぜ、若者に感染者が集中するのか憶測を呼んでいる。
感染者の最も多いメキシコでも、高齢者の感染者が少ないのは同じで、同国内で最多の治療実績を誇る国立呼吸器疾患研究所付属病院でも、重症で入院する患者の大半が20〜50歳だった。
世界保健機関(WHO)の緊急委員会委員を務める田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長も、今回の新型インフルエンザで60歳以上の感染者がほとんどいないことを不思議がる。
田代センター長は「今から60〜65年前に、今回の新型ウイルスに似たウイルスが流行し、高齢者が免疫を獲得している可能性がある」と指摘する。CDCのリチャード・ベッサー所長代行も6日の記者会見で、春休みにメキシコを旅行した若者から新型インフルエンザの感染が広がったのが一因としながらも、高齢者が新型のウイルスに対して免疫を持っている可能性があるとの見解を示し、今後詳しく調査する必要性を強調した。
朝日新聞 5月9日
【ワシントン=桜井林太郎】米疾病対策センター(CDC)は8日、米国内の新型の豚インフルエンザ感染者が43州で計1639人(うち死者2人)確認されたと発表した。前日より700人以上増えた。
メキシコも前日より100人以上増え、世界全体の感染者は3398人に上り、3千人を初めて超えた。
CDCによると、日本人男児(6)の感染が確認されたイリノイ州が392人で最も多く、ウィスコンシン州が240人、ニューヨーク州が174人、アリゾナ州が131人、カリフォルニア州が107人と、5州で100人を超えた。CDCは「さらに、確認例や入院患者、死者が増えるだろう」としている。
朝日新聞 5月9日
厚生労働省は9日朝、成田空港の検疫で、米デトロイト発の便で成田空港に帰国した大阪府内の日本人男性3人が、新型の豚インフルエンザに感染していることが確認された、と発表した。国立感染症研究所でウイルスの遺伝子検査をした結果、新型インフルの陽性反応が出た。国内で感染者が確認されたのは初めて。
同日午前8時半から舛添厚生労働相が記者会見して発表する。空港での検疫で見つけたことから、国は「ただちに国内の感染拡大につながる可能性は低い」として、渡航制限や、外出の自粛、学校の臨時休校といった新たな段階の国内対策に、すぐには移行しない考えだ。
厚労省や大阪府教委によると、感染が確認されたのは、同じ府立高校の40代の教員1人と10代の生徒2人の計3人。4月24日から5月7日までカナダのオークビルに滞在し、米デトロイトを経由して8日午後4時半過ぎに着いた。機内で近くに座っていて、「濃厚接触」の可能性がある乗客、乗員約50人は空港周辺の施設に足止めされている。
成田に到着した際、教員は発熱やせき、関節痛などの症状があった。生徒2人は鼻水とせきがあったが、熱はなかった。
3人とも、空港検疫での簡易検査ではA型のインフルエンザと診断された。さらに同研究所でウイルスの遺伝子検査を実施したところ、A型だが、通常の季節性インフルエンザのA香港型を否定され、さらにウイルスの表面にあるたんぱく質が、新型でA型の豚ウイルスと同タイプだった。3人は空港近くの病院に入院している。
朝日新聞 5月9日
3人の患者は機体の中央から後部の座席に、点在する形で座っていた。
症状が重かった46歳の男性教員は機体の最後部に近い位置。8日時点で38.6度の発熱やのどの痛みなどを訴えている。16歳の男子生徒2人は機体中央と、やや後方の座席で、鼻水やせきなどがあった。男子生徒のうち1人は機内検疫で特に問題はなく、機外に出た後で、便を乗り換える途中に体調不良を訴えたという。
3人は現在検疫法に基づき、空港近くの感染症指定医療機関に入院中だ。
高熱が出た男性教員は、タミフルの投与を受けた。生徒2人は、熱もなく、容体が安定している。
一方、現地から3人と同じ便で帰国した学校関係者33人と近くの座席にいた乗客14人、乗員2人の計49人は到着後から3人の診断が確定する明け方まで、空港内の宿泊施設に足止めされた。午前8時半の時点で、体調を崩している人はいなかったという。
一行は9日朝、成田市内のホテルに全員マスクをつけて移動、食事後に、健康状態や機内の行動範囲など聞き取り調査を受けている。
今後、ウイルスの潜伏期間が過ぎる17日までの10日間、施設内に停留される。1日1回、医師か看護師による健康状態のチェックを受ける。基本的に外出はできず、施設内でも他人との接触を極力避け、室内で過ごすよう求められる。宿泊、食事の費用は国が負担する。
同便に同乗していて、すでに国内に入ったり、乗り換えたりしたのは約360人。乗り換えて海外に出た一部の人以外は、国内で発病する可能性もある。今後、機内で回収した健康状態の質問票に基づいて保健所などが本人らと連絡を取り、健康状態を確認する。舛添厚労相は、「(国内感染の拡大防止のため)全力を挙げてフォローする」と話している。
読売新聞 5月10日
新型インフルエンザに感染した高校生の近くに座っていた米国人男性(52)が9日、携帯電話とメールで読売新聞社の取材に応じ、「停留」の様子を伝えた。18日までの10日間、食事の時以外は部屋から出ることは原則禁止で、男性は「仕方ないが、やることがなくて困っている」と話した。
成田空港内の宿泊施設の男性の部屋を検疫官が訪ねてきたのは9日午前7時前。「近くの乗客の感染が確認された」と説明を受け、午前10時半頃、4フロアを貸し切られた、空港近くのホテルに移動した。厚生労働省の職員から「食事の時以外は部屋を出ないように」「どうしても部屋を出る際は、マスクをつけて、何も手を触れないこと」など細かく指示された。
従業員の入室も制限され、ルームサービスは一切ない。洗濯は室内の洗面所で行い、使用済みタオルはビニール袋に入れて廊下に出し、回収するという。
9日の昼食は会議室のような広い部屋で、カレーライスを食べた。感染を防ぐため、丸テーブルが約3メートル間隔で15ほど置かれ、男性は1人で座った。夕食はビーフステーキだった。
朝、昼、夕に義務づけられた体温測定。夕方に部屋を訪れた医師からは、「大丈夫」と言われた。男性は「不幸な状況だが、感染を広げないためにはしょうがない。事態が深刻なので、適切な処置だと思う」とあきらめた口ぶりだった。
高校生「授業遅れが心配」 一方、同じホテルには、感染した3人と同じ高校の生徒と引率教諭の計33人もいる。生徒の間からは、授業の遅れなどを心配する声も出ているという。
保護者や学校関係者らによると、生徒らは個室に1人ずつ宿泊。食事の時でも、ほかの人と2メートル以内に近づくことは禁じられる。引率教諭が生徒と話す時も内線電話を使用。携帯電話やメールで保護者らと連絡を取り合う生徒もおり、「1人で過ごす時間が長くてつらい」「予防のためにタミフルを服用するか聞かれたが、副作用が心配」などの声も。近く予定されていた中間テストや授業の遅れを気にする生徒も多く、学校側は「帰ってから補習をするので心配しないように」と連絡したという。
女子生徒と電話で話したという母親(45)は「娘は『早く迎えに来てほしい』と言っていた。(こうなる前に)なぜ早く帰国させなかったのか、学校の対応に疑問を感じる」。友人がホテルにいるという女子生徒(18)は「『大丈夫?』とメールしたら、『寂しい』という内容の返信があった。また連絡してあげたい」と気遣った。
厚労省によると、貸し切られたホテルの4フロアには、ほかの宿泊客や外部の人が立ち入れないようにされた。10日間たっても発症しなければ、解放される。期間中に許可なく施設外に出ようとしたり、質問に答えなかったりした場合、検疫法に基づき、罰則(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されることもある。
朝日新聞 5月10日
Q 患者と同じ飛行機に乗った人が、空港周辺の施設に足止めされたのはなぜ?
A 感染拡大を防ぐためだ。患者に面と向かって話したり、2メートル以内の席に座ったりしていた場合、感染の可能性が高い「濃厚接触者」とみなされる。新型インフルエンザは普通のインフルと同じで、主に「飛沫(ひまつ)感染」でうつると考えられるからだ。
Q 「飛沫感染」って何?
A 患者のくしゃみやせきが原因の感染だ。患者はのどが炎症を起こし、粘液が普段より多い。せきなどでウイルスが粘液の水分とともに粒子(飛沫)になって飛び出す。吸い込めば感染する可能性がある。実験で、飛沫は1〜2メートルしか飛ばないとされ、足止めする同乗者の範囲を決める元になっている。
Q 席が離れていれば安心なの?
A ウイルスを含む飛沫より小さい粒子が空気中を漂い、それを吸い込んで起きる「空気感染」(飛沫核感染)も注意が必要だとする専門家もいる。しかし、それもまれとみられ、機内全体に感染が広がる可能性は、ほとんどないとされる。
Q 別の経路で、感染の恐れはないの?
A 患者がせきなどを抑えた手でドアやスイッチを触れば、そこにウイルスが付く。それらに触れた人が、さらに鼻や口を触ることで「接触感染」も起こるため、手洗いが大切だ。
Q 感染力はどうなの?
A 新型インフルは通常のインフルのように、その場にいる患者1人からまわりの1〜4人程度に感染するとみられる。空気感染するはしかは患者1人から15〜20人で、これよりは弱い。電車の同じ車両に乗り合わせたぐらいではうつらないようだ。
Q どの程度の期間、注意が必要なの?
A 発症する1日前から7日後までが、患者から他人にウイルスがうつる期間だ。今回はこの期間中だったため、保健所が感染の可能性がある人を追跡調査する。必要と判断すれば、患者に接触してから10日間は自宅待機してもらう。従わずに出歩く人は感染をさらに広げてしまいかねないので、名前の公表も必要だと専門家は指摘している。
東京新聞 2009年5月12日
新型インフルエンザの患者が空港などの「水際」以外の国内で発生しても、イベントや外出の自粛、学校の休校などを一律には要請しないなどとする政府対策原案の概要が11日、判明した。
今回のH1N1型が致死率や症状の状況などから現時点で病原性がさほど強くないとされるため、既定の行動計画より柔軟に対応したとみられる。関係省庁が加わる政府対策本部の幹事会が作成した。
既定の行動計画は、病原性が強い強毒型ウイルス(H5N1型)を想定。「国内発生早期」の段階で、感染拡大を防ぐため、患者が発生した地域で集会の自粛や休校を要請することが盛り込まれている。
原案によると、患者や濃厚接触者が活動した地域では、スポーツ大会や集会などイベントについて、一律に自粛は求めないが、主催者に開催の必要性を再検討してもらうほか、開催の場合は感染機会を減らす工夫をしてもらい、体調不良の人には参加や観戦を控えるよう呼び掛けることを要請する。
学校や保育施設については、患者が児童、生徒の場合、市区町村の一部や全域、都道府県全域で臨時に休校、休園などとするが、患者がおらず、2次感染が発生するまでは休みを要請しないことにした。大学は、子どもたちが授業中に長時間隣り合っている小、中、高校とは異なるとして、各校の裁量に委ねる方針。
外出自粛も一律には要請せず、人込みを避け、マスク着用や手洗いの励行などを呼び掛け、時差通勤や通学、自転車利用などの検討を求める。
朝日新聞 5/12/09
【ジュネーブ=玉川透】世界保健機関(WHO)のフクダ事務局長補は11日の記者会見で、新型の豚インフルエンザの症状について「現段階で穏やかだと決めつけるのは早すぎる」と述べ、穏やかな症状が多いとしてきたWHOの見解を事実上修正した。
WHOはこれまで、重症者が多く出ているメキシコを除き、穏やかな症状が多いとの見方を示す一方で、新型ウイルスへの感染が若年層に集中しているのは「メキシコなど感染地域に若者が旅行に行きがちなことの反映」と説明していた。
しかし、関係筋によると、最近になって米国の症例が多く集まり、分析の結果、季節性のインフルエンザでは重症化しにくい若い世代に、肺炎などの重症者が一定数、メキシコ以外でも見られることが分かってきたという。
WHOは「感染が広がれば若い世代に重症者が増える可能性があり、社会的なインパクトが大きい」(同筋)と判断、軌道修正を余儀なくされた格好だ。フクダ氏はこの日「(症状は穏やかだという)当初の見方は変わりつつある」と発言。特にこれからインフルエンザの流行しやすい冬を迎える南半球では、若者の人口比率が高い途上国が多いことから、一層の警戒が必要だとの認識を示した.
朝日新聞 5月12日
【ワシントン=桜井林太郎】新型の豚インフルエンザに、メキシコで4月末までに約2万3千人が感染したと、世界保健機関(WHO)や英国、メキシコの国際研究チームが推計した。死亡率は0.4%と見積もられ、1918年に大流行したスペイン風邪ほどではないが、約0.1%とされる季節性のインフルエンザより高い。11日付の米科学誌サイエンス(電子版)に緊急報告した。
メキシコではこれまで2059人の感染が確認されている。一方で、実際の感染は相当広がっていたことになる。
研究チームは、世界各国への感染はメキシコから旅行者を通じて広がったと仮定。各国の感染者数や、メキシコから飛んだ航空機、乗客がメキシコで滞在した期間などのデータのほか、ウイルスの遺伝子の変化も調べ、メキシコで4月末までにどれだけの感染者が出たのかを計算した。
その結果、メキシコでの感染者数は、症状が軽かったり、出なかったりした場合も含め、約2万3千人と推計した。死亡率は、疑わしい死者も含め、約0.4%となった。1人の感染者が別の1.4〜1.6人にウイルスをうつし、4月末までに人から人へ14〜73回の感染を繰り返したと推定。過去に大流行したインフルエンザほどではないが、通常の季節性インフルエンザより感染力が強いという。
また、研究チームによると、今回のインフルエンザ発生の端緒とされる、メキシコ市から東へ約200キロにあるラグロリア村で最初の感染者が出たのは2月15日ごろ。15歳未満の子どもの61%が感染し、15歳以上の約2倍の感染率だったという。
毎日新聞 5月13日
その1
新型インフルエンザの感染者は13日現在、世界で6000人に迫る勢いで、日本でも発症者が出た。症状は普通のインフルエンザとほぼ同じらしいが、安心して良いのだろうか。最悪の場合に備え、専門家にワーストシナリオを聞いた。【國枝すみれ】
<専門家が描く悲劇的シナリオ>
・免疫なく人口の2〜4割が罹患
・爆発的感染で戦時並み犠牲
・高病原性の出現
◇「それでも理性保って」
★「スペイン」の悪夢
慶応大学の速水融名誉教授(歴史人口学)は、新型インフルエンザは1918年から3年間猛威をふるったインフルエンザ「スペイン風邪」に似ていると警告する。スペイン風邪のウイルス構造は今回の新型インフルエンザと同じH1N1型で、やはり弱毒型だった。だが最終的に世界で2500万〜4500万人の死者を出した。
速水氏によれば、スペイン風邪は最初、人々の注意をひかなかった。1918年3月に米カンザス州の軍基地で発生。新兵数千人が罹患(りかん)し、数十人が死んだ。「3日風邪」と呼ばれ症状は軽かった。ところが8月後半までにウイルスが変異。最初の感染爆発が起きた米国の港町ボストンでは病院に死体が積み上がる惨状となった。
スペイン風邪は日本をどのように襲ったのか。東日本の32紙の報道によると、1918年4月3日に最初の感染報道が、5月中旬には死者が出るが、数件で終わる。はやりの症状は軽かった。「最初は相撲風邪と呼ばれていた。力士が次々と休場したから」
しかし同年10月から再び死者が発生。11月だけで13万人以上が死亡。翌19年の12月〜20年2月にも流行に襲われ、ピークの20年1月には7万人以上が死んだ。死者の総計は45・3万人。「日露戦争の戦死者だって約8万人だったんだよ。いかに多くの国民が短期間に死んだかが分かるでしょう」と速水氏。
スペイン風邪は2波、3波と襲いかかり、そのたび致死率は高まった。今回も南半球にウイルスが滞在し、日本がウイルスに適した乾いた冬になった時に再襲する可能性はある。ウイルスという概念さえなかった当時に比べ、現代社会は薬やワクチンがあり、情報網も発達している。だがジェット機やエレベーター、全館空調システムのビルなど密閉空間も生まれ、ウイルスに味方するものも増えた。速水氏は言うのだ。「新型インフルエンザとの闘いはまだ始まってもいない」。
★免疫がない
免疫の有無で状況は大きく異なる。日本人の多くが免疫を持つ季節性インフルエンザでは毎年人口の1〜2割が感染、1万〜3万人が死ぬ。致死率は0・05〜0・1%。ところが、住民に免疫のないマダガスカル島に季節性インフルエンザが02年に上陸した際は、罹患率は67%、致死率は2%に達した。
そして我々は新型インフルエンザに対する免疫を持っていないのだ。
厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議の議長で、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、過去のパンデミックの感染率から推測して、新型のインフルエンザが国内で広がった場合、全人口の2〜4割が感染する可能性があるという。25%の感染と想定した場合、57年に流行したアジア型並み(致死率0・53%)の強さなら、入院患者は53万人、死者は17万人。スペイン風邪並み(致死率2%)なら、200万人が入院し、64万人が死亡する計算だという。
今回の新型インフルエンザの致死率は、メキシコで0・4%だ。医療が進んでいる日本での数字は低くなるとみられる。
しかし、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の土居弘幸教授(疫学・衛生学)は「今回の新型インフルエンザがもっと病原性や感染力を強めて、世界にまん延する可能性がないともいえない」と話す。
糖尿病、人工透析、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)など基礎疾患を持っている人や妊娠後期の妊婦はインフルエンザが重症化しやすい。
土居教授はいう。
「必ず犠牲者は出る。仮に2、3カ月に64万人が死ぬようなことになれば太平洋戦争以上のペースだ。数カ月の間にあの人もこの人も死んだという事態が起きる。その時に冷静な対応をすること。いくら心配しても状況は変わらない。変えられるのは自分の行動だけだ」
★強毒性の恐怖
岡部氏にもワーストシナリオを聞いてみた。
「H5N1ですね」と迷わず答えが返ってきた。トリの間で流行している高病原性のインフルエンザウイルスだ。人に感染した例は数百件あり、一部では人から人への感染例も出ている。感染した場合、脳、心臓、肝臓、腸、血管内膜など全身にウイルスが広がる。WHO(世界保健機関)統計によれば、致死率は56%、10代に限れば73%にもなる。危険度は今回の新型インフルエンザの比ではない。
また、地球上には豚とトリと人が一緒に暮らす地域もある。豚の体内でトリと人のウイルスが混じり合い、トリのウイルスの強毒性を保ったまま人間に罹患するタイプの豚インフルエンザウイルスが出現することもありえる。
新型インフルエンザは今のところタミフルとリレンザが効くが、耐性を持つウイルスが生まれるシナリオも考えられる。
強毒の新型インフルエンザがまん延したらどうするのか。土居教授が強調するのは理性だ。不要不急の外出はしない、マスクをして、うがい、手洗いをする、症状が出たら病院に行かず発熱外来に電話する、など決められたことを守ることが重要だという。
「行動は制約されますが、空爆直下、戒厳令下と思えばいいわけです。サンフランシスコ大地震の時は暴動が起きたが、阪神淡路大震災では何も起きなかった。日本人の美徳を発揮すればいい」
最悪のシナリオは、爆発的な感染で患者が一度に医療機関に押し寄せ、社会がパニックになって経済がストップすることだ。速水氏は「(ピーク時の外出を避けるため)3週間分の食料は備蓄しておきなさい。マスクは使い捨て」という。
今ですら店頭でマスクは品薄だが、足りない場合は? 「70度以上のお湯で熱湯消毒してもいいよ。ウイルスは熱に弱いから」。マスクにアルコール(エタノール消毒液)をスプレーして、一晩干すという手もあるという。
情報を集めて準備を整え、万一の場合は落ち着いて行動するしかなさそうだ。
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2009年5月16日 10時24分
東京新聞 2009年5月16日
【ワシントン15日共同】米疾病対策センター(CDC)のダニエル・ジャーニガン医師は15日の記者会見で、米国内の新型インフルエンザの感染実態について「あえて推計すれば、発症者の広がり具合からみて10万人以上だ」との見解を示した。
検査で判明した感染者数以外に、米保健当局が感染実態の推計を明らかにしたのは初めて。米国で新型インフルエンザが水面下で季節性インフルエンザ並みにまん延している可能性を指摘した。
CDCの15日付の集計では、感染が確認された人と感染がほぼ確実な人の合計が46州と首都ワシントンで計4714人。症状があっても病院に行かず、検査を受けない人も多いため「確認数は氷山の一角」としていた。
一方、米テキサス州の保健当局は15日、先週末に死亡した30代の男性から新型インフルエンザウイルスを検出したと発表した。感染に伴う米国の死者は5人目。
読売新聞 2009年5月16日
厚生労働省は16日、神戸市内の県立高校に通う3年男子生徒(17)について、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)への感染が確認されたと発表した。
水際の検疫以外では国内初の感染確認となる。同じ県立高校に通う2年男子(16)と2年女子(16)も発熱などを訴え、16日の遺伝子検査で陽性を示し、国立感染症研究所で最終確認検査を行っている。3人はいずれも海外渡航歴がない。
国内で「人から人への感染」が進んでいる可能性があり、政府は行動計画の引き上げや、国内感染の拡大防止対策に乗り出す。
神戸市は16日、市東部3区の市立幼稚園、小中高など計99校について、22日までの7日間、休校とすることを決めた。また、市内の私立学校や大学などにも休校を要請する。
神戸市によると、感染が確定した3年男子は11日に悪寒を訴え、翌12日に市内の開業医を受診。37・4度の熱があり、簡易検査でA型インフルエンザの陽性が出たため、医師が検体を市環境保健研究所に送ったところ、15日の遺伝子検査で陽性反応が出た。16日の国立感染症研究所の検査で感染が最終確認された。
また、この開業医の聞き取りなどで、2年男子と2年女子の2人にも発熱などの症状があり、簡易検査でA型陽性を示していたことが判明。市環境保健研究所の遺伝子検査で新型の陽性反応が出た。3人は16日未明、相次いで感染症指定医療機関に入院した。
3年男子は15日には36度台に熱が下がっており、2年女子も鼻水が少し出る程度でほぼ回復。2年男子は15日夕現在、39・7度の熱があった。3人の家族に症状は出ていないという。
3人が通う県立高校によると、3年男子はバレーボール部、2年男子はサッカー部に所属。3人はクラス、部活動などが異なり、特に濃厚な接触はないとみられる。ただ、同校では、生徒約1000人のうち、16日現在、3人とは別に17人の生徒がインフルエンザのような症状を訴えているといい、同市が簡易検査を進めている。
同校では16日午前に全校生徒と連絡を取り、外出自粛と部活動の中止を指示した。
神戸市は16日朝から3人の接触調査などを本格化させた。厚労省も16日朝、神戸市に職員1人を派遣。潜伏期間(7日間)に生徒と接触した可能性のある人物をリストアップし、電話や面談で接触状況や健康状態について質問するなど、感染経路の確認を急ぐ。
国内で新型の感染者が出たことにより、政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長・麻生首相)は、政府の行動計画を現在の「第1段階(海外発生期)」から、「第2段階(国内発生早期)」などへ引き上げる見通し。対策の重点も検疫などの水際作戦から、国内の感染拡大防止策に移る。
東京新聞 2009年5月17日
厚生労働省は17日、大阪府内の同じ高校に通う生徒9人の新型インフルエンザ感染が、国立感染症研究所の確定検査で確認されたと発表した。大阪府で初の確認。神戸市も同日、新たに高校生4人の感染を発表。水際の検疫を除く国内感染者は、2府県で高校生ばかり計21人となった。
大阪の9人は私立関西大倉高校(大阪府茨木市)の1−3年の男子6人、女子3人。同校によると、11日ごろから校内でインフルエンザが流行し、欠席が続出していた。前日の8人と合わせて12人となった神戸の感染者も兵庫県立高校2校の生徒で、学校単位で集団感染が起きた可能性が高まっている。
府によると、9人は茨木市に4人、吹田市に3人、豊中市と大阪市に1人ずつ居住。13日から15日にかけて熱やのどの痛みを訴え、医療機関で受診し入院中。いずれも海外渡航歴はない。
関西大倉高校によると、今月に入り発熱などで生徒143人が欠席。体調不良を訴える教職員も相次いでいた。同校は18日から23日まで学校閉鎖する。
府内で初の感染確認を受け、大阪府の橋下徹知事は17日午前、対策本部会議を開催し、一部の学校に臨時休校を要請するほか、映画館などにも休業を要請することを確認した。
神戸市で新たに確認された4人は、県立神戸高校2−3年の男子3人と女子1人。うち男子2人は、前日感染が確認された3年の男子生徒と同じバレーボール部員。
2009年5月18日 2時30分 更新:5月18日 2時49分
一斉休校などの感染拡大防止策の是非について、専門家に聞いた。感染症拡大のシミュレーションを研究する浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(小児科学)は「何も対策をとらなければ、患者が急速に拡大する。感染拡大を収束させるため、患者隔離や休校は有効な手段だ」と話す。
11日に発表された米科学誌サイエンスの論文では、メキシコの状況を分析した結果「今回の新型インフルエンザは患者1人あたり1.4〜1.6人に感染する」とされた。一方、仏のチームが14日、欧科学誌に発表した論文では、メキシコでの新型の感染力は患者1人あたり2.2〜3.1人と、スペイン風邪並みの強さがあることが示された。
浦島さんがシミュレーションしたところ、何も対策をとらなければ1人あたり1.4人の場合、国内での人から人への感染開始からピーク時の100日後に感染者は人口の5%に達する。3人の場合はピーク時の30日後に人口の3割に達し、社会活動のマヒや医療機関のパンクが起きかねないことが分かった。浦島さんは「米国では、季節性インフルエンザよりも重症者や入院者が多い。できる対策はとるべきだ」と話す。
根路銘(ねろめ)国昭・生物資源研究所長(ウイルス生態学)は「新型ウイルスは、肺で増殖し重症化させるたんぱく質の構造が壊れており、感染力はあまり強くない。現在の患者数程度で休校するのはやり過ぎだ。過剰反応は社会全体への不安を拡大させ、経済的な影響などマイナスの影響の方が大きくなってしまう」と懸念する。【永山悦子、下桐実雅子】
東京新聞 2009年5月18日 22時47分
大阪府と兵庫県で発生した新型インフルエンザの国内感染で18日、兵庫県で新たに14人の感染が判明した。厚生労働省などによると、成田空港の検疫段階で見つかった4人と合わせ、国内で確認された感染者は計144人となった。
文部科学省によると、2府県の幼稚園、小中高校、大学など計4043校が休校・休園を決めたか、要請を受け検討中。大半の休校は18日から始まり、大阪府や兵庫県などによると、生徒・児童144万人以上が自宅待機となる。
新たに感染者が確認される学校や職場が増加。居住地や年齢層も広がり、イベントの中止など市民生活への影響もさまざまな場で出ている。
大阪府立柴島高校(大阪市)と同春日丘高校(大阪府茨木市)の生徒や、国土交通省・豊岡河川国道事務所(兵庫県豊岡市)で働く委託会社の社員の感染が初めて判明。既に感染者が10人を超えている関西大倉高校(茨木市)、兵庫県立兵庫高校(神戸市)は感染者がさらに増えた。
一方、神戸市でこれまでに感染が確認されていた患者のうち11人は症状が改善したため退院した。
兵庫県西宮市の職業体験型テーマパーク「キッザニア甲子園」が19日から1週間の臨時休業を決めた。
発熱やのどの痛みなどの症状を訴え、医療機関で受診したり、入院したりする人も増え、本格的な流行が始まった可能性がある。
(共同)
東京新聞 2009年5月19日
【ジュネーブ18日共同】世界保健機関(WHO)の年次総会が18日、ジュネーブの国連欧州本部で5日間の日程で開幕した。初日の午後開かれた新型インフルエンザに関する閣僚級のハイレベル協議では、WHOが警戒水準を現在の「フェーズ5」から世界的大流行(パンデミック)認定を意味する「6」に引き上げることをけん制する声が英国や日本などから相次ぎ、水準引き上げ問題が一気に政治色を帯びてきた。
WHOのチャン事務局長は18日、現時点では「5」に据え置くと表明。さらにパンデミック宣言への懸念が強まっていることに関連し「加盟国の意向を注意深く考慮して責任を全うしたい」と述べ、慎重に対応する方針を示した。
年次総会は新型インフルエンザの感染拡大が続く中、感染の抑制や対策で国際社会の連携をどう進めるかが焦点。
英国のジョンソン保健相は「(水準引き上げを決断するチャン事務局長は)機械的な手続きを進めるだけでなく柔軟性を持つべきだ」と発言。症状が軽くても感染の地理的な拡大だけで警戒水準が上がる現在のシステムに疑問を呈し、慎重な対応を求めた。これに対し、日本の渡辺孝男厚生労働副大臣が「同意」を表明。ニュージーランドや中国も同調した。
一方、チャン事務局長は年次総会で演説し「新型インフルエンザがどのように変異していくか予測できない」と述べ、警戒を呼び掛けた。
WHO当局者の間では日本で感染確認が急増していることなどを背景に、警戒水準が上がることが「週内にもあり得る」(フクダ事務局長補代理)との見方が広がっていたが、チャン事務局長は今後、難しい判断を迫られそうだ。
総会には事務局長以下WHO幹部と、加盟193カ国から保健相ら多数の閣僚級代表者が出席。中台関係の改善を反映し、台湾が、国連から追放された1971年以来、初めてオブザーバー参加した。
19日には国連の潘基文事務総長が参加し、途上国への新型ウイルス向けワクチンが十分確保されるよう、世界の製薬業界首脳との会合で要請する予定だ。
●「日本はモデルケース」WHOが注目 新型インフル
朝日新聞 2009年5月19日
【ジュネーブ=田井中雅人】新型の豚インフルエンザの感染者急増への日本の対処法に世界保健機関(WHO)が注目している。途上国に比べて検査態勢や医療態勢が充実している日本での急増だけに、未知の病気との戦いのモデルケースになるとの指摘が出ている。
WHOで新型インフル対策にあたる進藤奈邦子医務官は「(患者が急増している)神戸や大阪は検査・報告体制がしっかりしており、学校閉鎖やイベント中止などの措置がきちんととられている。日本については、感染拡大で危機的状況になるような心配はしていない」と話す。
さらに進藤氏は「日本で数多くの治療経験を重ねるなかで、どういう人が重症化するかや、危険因子があるのかといった、未知のウイルスについての情報も集まる。世界に先駆けて新型インフルに対処するモデルケースとなりうる」と期待を口にする。
最近のWHOの専門家らの注目は、英国、スペイン、日本の3カ国だ。海外渡航歴がなく、だれからうつされたかわからない「地域社会レベルの持続的感染」が、米州以外で確認されれば、警戒レベルを現在のフェーズ5から最高度の6(パンデミック)に引き上げる要件が整うからだ。
英国やスペインは「感染者の大半は北米への渡航歴があり、持続的感染にはあたらない」と主張。感染確認者数が急増する日本に注目が集まる構図になっている。
読売新聞 2009年5月19日
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染拡大で、神戸市は19日、市内の一般医療機関で軽症患者の診療を始めるのを機に、感染者の遺伝子検査を取りやめ、感染者数を集計しない方針を固めたことを明らかにした。
神戸市では約1500の一般医療機関での受診に移行することが決まっており、今後、簡易検査で陽性となる検体数の増加が見込まれるため、すべての遺伝子検査には対応できないと判断した。今後は季節性インフルエンザのケースで行われている定点観測のように特定の医療機関だけで遺伝子検査して計測する。
国の対策計画では第2段階(国内発生早期)にあたるが、市は、市内は「『まん延期』に近い」と判断した。国の計画ではまん延期になって患者が激増すれば、一般医療機関で診療でき、患者の全数把握もしなくてよいことになっている。
東京新聞 5月21日
<解説> 東京都内と川崎市での新型インフルエンザ感染確認は、関西での感染の広がり状況からみて、
時間の問題と考えられていた。流行が全国的になることは確実で、もはや誰にも感染の恐れがある。
国内の感染状況は四月下旬の米国と酷似している。米当局は米国で既に十万人が感染しているとみており、
日本も後を追いそうだ。季節性のインフルエンザでも、毎年五百万人から一千万人が感染する。
新型の感染力は同等かそれ以上とされているから、もっと増えても不思議はない。
問題は重症者の出現だ。ほとんどの人は軽症ですむけれども、季節性インフルエンザとは異なった層が重症化するようだ。
押谷仁東北大教授は「高齢者ではなく、二十−五十歳代の基礎疾患のない人や幼児で、
重症のウイルス性肺炎を起こすことがある」と話す。インフルエンザの後の細菌感染による肺炎ではなく、ウイルスそのものが悪さをするのだ。
ニューヨークでは、初感染から一カ月後に死亡者が出た。最初は健康な若者が感染。
その後、合併症の危険を持つ人々にまで拡大し、重症者が出現。集中治療室に入って、手厚い治療を受ける。
それでも亡くなる人が、ポツポツと現れているのが現状だ。
首都圏の医療事情は決して十分ではない。三千万人が住み、人と人との交流が頻繁なので、ウイルスが伝わるのは速い。
一方で、重症者を受け入れる集中治療室は不足している。やはりリスクの高い妊婦を手当てする産科病棟も集約化され、少なくなっている。
感染防御は不可能なのだろうか。堀賢順天堂大准教授は「言い古されていることだが、こまめな手洗い、
うがい、マスクでウイルスの拡大を抑えられる。一人一人の努力で、社会全体の感染リスクを下げることができる」としている。
(社会部・吉田薫)
東京新聞 2009年5月21日
【ジュネーブ21日共同】世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は21日、新型インフルエンザの警戒水準を最高の「フェーズ6」に引き上げて世界的大流行(パンデミック)の発生を宣言する条件として、「(感染が)地球規模であることを満たさなければならない」と述べ、南半球まで本格的に拡大することが条件だとの新たな認識を示した。引き上げの条件を事実上変更したといえる。
WHOによる現在の定義上は、国内感染が続く「地域社会レベルの持続的感染」が、既に確認されている米州地域以外で発生することが引き上げの条件。欧州のほか、感染が急拡大している日本が「パンデミック宣言の引き金になりかねない」との懸念が政府関係者らの間で広がっていた。
しかし、これまでのところ新型インフルエンザの全体的な健康被害が軽いのに対し、強毒性の鳥インフルエンザの流行を念頭にしたWHOの定義を機械的に適用すれば、社会的な混乱を引き起こしかねないとの主張が英国などから相次いだ。これを受け、事務局長として引き上げ条件を厳しくする政治決断を下したとみられる。
事務局長は開会中のWHO総会の会合で、警戒水準引き上げに慎重な対応を求めた英国などに答える形で発言。「(既に感染が広がっている)北半球が世界を代表しているわけではない。人々の(定義をめぐる)混乱を放置するわけにはいかない」などと述べた。
AFP 2009年05月07日 23:43 発信地:パリ/フランス
【5月7日 AFP】新型インフルエンザ「インフルエンザA(H1N1)」がパンデミック(世界的流行)の一歩手前といった感で広まっているが、これまでに新型に感染した人は、今後このウイルスがより致死性の高い型に変異した場合も、すでに免疫があるために感染せずにすむかもしれないと、科学者らが指摘した。
こうした現象は、1918年にスペインかぜが世界的に大流行した際にみられたという。この年、春により軽い春かぜにかかった人は、強度の致死性をもつスペインかぜが数か月後に猛威を振るい、世界で少なくとも4000万人が死亡した際、最初のかぜが実質的に予防接種の役割を果たしていたことが、最近の研究で明らかになっている。
前年11月に感染症専門誌「Journal of Infectious Diseases」に発表された研究では、スペインかぜに第一波で感染した人は、その時に感染しなかった人に比べ、死亡率が70%低かった。この結果から、今回の新型インフルエンザでも、感染を徹底的に避けてまわったほうが、後の死亡率抑制につながらないかもしれない、という可能性が示唆される。
同研究を行った米ジョージワシントン大学(George Washington University)の伝染病学者、ローン・シモンセン(Lone Simonsen)氏は「1918年の場合、現在われわれが持てる判断力から考えると、ウイルスの毒性がまだ弱かった最初の一波の感染を許したほうが、免疫力をつける上で良かったはずだ」と語る。
約1世紀前にパンデミックを引き起こしたスペインかぜの初期段階と同様、今回の「インフルエンザA(H1N1)」もこれまでのところ、感染範囲は広いが死亡例は少ない。
世界保健機関(WHO)によると、「インフルエンザA(H1N1)」は過去2週間で23か国に広がり、1500人以上に感染、感染者の90%は北米地域にいる。これまで亡くなったことが報告されているメキシコの42人のうち、健康な若者が半数を占めているパターンも、スペインかぜの時と状況が似ているという。
「1918年と似たシナリオだとしたら、より『人に優しい』最初の一波を抑制したくはない、という気持ちはある」と共同研究者である米国立衛生研究所(US National Institutes of Health、NIH)のCecile Viboud氏も言う。
しかし2人の研究者とも、自分たちの発見を政策に転換することは困難だろうという点で一致している。シモンセン氏はAFPの電話取材に「過去は過去、いまはいまだ。第2波があるのかも、それがどれだけ深刻なものになるかも分からない。現在行われている抑制策も有効かもしれない」と答えた。Viboud氏もAFPのEメール・インタビューに「新しいインフルエンザ・ウイルスの環境適応の過程について、われわれが知っていることは十分でない」と回答した。(c)AFP/Marlowe Hood
★5月7の記事
産経新聞 5月13日
【ニューヨーク=松尾理也】新型インフルエンザの免疫獲得のため、比較的毒性が弱いとされる今のうちにわざと感染したほうがいい−。こんな意見が、米国のインターネット討論サイトなどに登場、米疾病対策センター(CDC)が「大きな過ちだ」と警告する事態に発展している。
米国では、予防接種に反対する立場の親らを中心に、水ぼうそうの免疫を付けるため故意に感染することを目的に子供たちを患者と同席させる「水ぼうそうパーティー」が一部で行われているという。今回の議論は、これを新型インフルエンザに応用した「新型インフル・パーティー」が有効ではないか、というもの。
新型インフルエンザは現在のところ、毒性は通常の季節性インフルエンザと同等とされる。この段階で新型インフルエンザに感染して免疫を獲得しておけば、今後より毒性が強くなったウイルスが流行した場合に有利、という考え方だ。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、専門家の間にも、消極的ながら「感染するならしたで、その方がいい」とする意見もあるといわれ、実際にそのような「パーティー」が実施されたかどうかは不明なまま、議論は白熱していた。
これに対し、CDCの責任者はこのほど、「新型インフルエンザは未知の感染症であり、人体にどのような影響をもたらすかは十分に解明されていない」と指摘。「人体を危険にさらすのは大きな過ちであり、そのような行為は推奨しない」とクギを刺した。
★5月13日の記事
読売新聞 2009年5月22日
政府は22日、麻生首相と全閣僚による「新型インフルエンザ対策本部」の会合を開き、新型インフルエンザが弱毒性であることを踏まえた新たな「基本的対処方針」を決定する。
今後の対策を感染拡大の防止と糖尿病などの持病があり重篤化する恐れのある人の感染防止・治療に集中する。
焦点となっていた休校措置の緩和や一般医療機関での受診については、厚生労働相が別途「運用方針」を定め、患者数に応じて地域を二つに分類し、それぞれの地域で講じるべき対応策を規定した。大阪、兵庫のような患者数が急増している地域では一般の医療機関での診療や自宅療養を認めるなどとしている。
読売新聞が入手した新たな基本方針案では、新型インフルエンザが、軽症のまま回復していることなどから、季節性インフルエンザと類似する点が多いと分析した。ただ海外で基礎疾患がある人が死亡する例があることを指摘し、「国民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ感染拡大を防ぐとともに、基礎疾患を有する者らを守るという目標を掲げることが適当」と明記した。
厚労相が定めた運用方針で分類した二つの地域は「患者が少数で感染拡大防止に努めるべき地域」と「急速な患者数の増加が見られ重症化の防止に重点を置くべき地域」で、前者は従来の対処方針とほぼ同様の対応だが、後者は大阪や兵庫などの要望の一部を盛り込み、現行の制限を大幅に緩和した。
一方、地域ごとの対策とは別に水際対策も大幅に縮小する。メキシコ、米本土、カナダからの旅客便の一律の機内検疫は終了し、患者の周辺にいた旅客の停留措置も行わない。さらに、新型インフルエンザかどうかを調べる遺伝子検査は、新たな地域の患者発生把握を重視し、患者が未発生の地域の検体を優先して調べるとした。
NHK 5月23日
国内で新型インフルエンザウイルスの感染が広がっていることをいち早く察知するため、国が整備していた「外来サーベイランス」という監視システムが、全国ほとんどの自治体で運用されず、機能していなかったことがわかりました。専門家は「感染拡大の発見の遅れにつながった可能性もある」と指摘しています。
国は、海外で新型インフルエンザウイルスの感染が確認された際、日本国内での感染をいち早く察知するため「外来サーベイランス」という監視システムを整備しています。
このシステムは、全国のおよそ7500の医療機関が、高熱やけん怠感などインフルエンザに似た症状を訴えた患者の人数を、毎日、国に報告するというものです。空港や港で感染に気づかず、入国した人がいても、国内で感染が広がり始めた段階で異変を察知するのがねらいで、厚生労働省は、今月1日システムの運用を始めるよう都道府県などに通知しました。
しかし、感染が数多く見つかった兵庫県や大阪府を含め全国のほとんどの自治体では、医療機関に運用開始を知らせるなどしておらず、システムが機能していなかったことがわかりました。運用を始めていない自治体は「通知に気づいていなかった」とか、「水際対策で手いっぱいだった」などと理由を話しています。
これについて、新型インフルエンザ対策に詳しい東北大学の押谷仁教授は「システムが機能していなかったことが、感染拡大の発見の遅れにつながった可能性もある。感染の広がりを検知する仕組みを早急に整える必要がある」と指摘しています。厚生労働省は「十分な準備ができていなかったと言われればそのとおりだが、システムが機能しなかったから感染者を見逃したとは思わない。早期に感染者を発見するため、このシステムを含め、さまざまな監視システムを機能させるようにしたい」としています。
朝日新聞 5月27日
国立感染症研究所は26日、大阪府で初めて新型の豚インフルエンザ感染が確認された関西大倉中学・高校(茨木市)で実施した疫学調査を中間報告した。ゴールデンウイーク明けの11日以降、同じクラスで感染が広がり、通学バスで学年の壁を超えて拡大していったことが、調査でみえてきた。
患者の生徒や家族、学校関係者から症状や接触状況などを聞き取った。
11日に、高校2年のクラスで3人が季節性のA型インフルエンザの疑いで欠席、12日に同じクラスの8人が熱を出して早退。13日に高校2年全体で欠席者が36人に達し、学年閉鎖になった。
16日には高校2年の女子生徒が新型インフルと判明、学校閉鎖となった。こうした経緯から感染は高校2年から始まった可能性が高いという。
感染の広がり具合や教室の席の位置などから、親しい生徒同士で感染が始まったことも分かった。
高校2年から別の学年へ広がった原因は、約1900人の生徒のうち1500人が使う通学バス(3系統)が考えられた。常に満席で、会話が盛んだった状況などから、バスで学年をまたいだ感染を起こしたらしい。同校は弁当が多く、人が集まる食堂はあまり利用されていなかった。
国立感染研の安井良則・主任研究官は「比較的、長時間、近くで接触するうち、(つばやせきなどによる)飛沫(ひまつ)を吸い込んで感染していったようだ。空気感染があったとは思えない」と指摘。
さらに、同校の通学区域が広範囲にもかかわらず、感染は友人や家族などに限られていることから、「それほど高い感染性はないだろう」との見方を示している。
ゴールデンウイーク中に海外に行った人も調査したが、いずれも発症はなく、感染の始まりは依然不明だという。
安井さんは、学校関係者や生徒、保護者らが誹謗(ひぼう)中傷などを受けている状況を指摘。「誰が悪いというわけではない」と冷静な対応を呼びかけた。(錦光山雅子、本多昭彦)
時事通信 5月28日
神戸市の矢田立郎市長は28日、新型インフルエンザ対策本部会議後に記者会見し「『ひとまず安心』の宣言を全国に発信する」と述べ、市民に平常の生活への移行を呼び掛けた。今後は個人予防や経済復興へ、かじを切るとしている。
市内では23日以降の発症者数が4人にとどまり、市は感染が終息傾向にあると判断。同市長は「休校措置などが集団感染防止に大きな効果があった」と述べた。
中止となった神戸まつりについては、7月19日に延期して再開するとした。(2009/05/28-13:14)
朝日新聞 5月28日
【シンガポール=塚本和人】オーストラリア保健・高齢者問題省は28日、同国内での新型の豚インフルエンザ感染者数が計147人になったと発表した。豪州では26日から感染者が急増している。これから冬に向かう南半球では感染の拡大が心配されており、豪政府は抗ウイルス薬を大量購入するなど本格的な感染拡大防止に乗り出した。
同省によると、26日時点の感染者数は39人だったが、27日には66人に増え、28日に147人になった。
朝日新聞 5月28日
JR東海は28日、東海道新幹線の5月1日から27日までの利用客数が昨年の同時期より14%減ったと発表した。月ごとでみた過去最大の落ち込み幅は、阪神大震災で山陽新幹線が一部不通になった95年2月の同13%減で、これを超える勢いだ。
景気低迷に加え、新型インフルエンザを警戒して関西などへの出張や修学旅行の自粛が広がったためとみている。新型インフルエンザの国内感染がまだ確認されていなかった今年4月は同11%減で、落ち込み幅は3ポイント拡大。松本正之社長は28日の記者会見で「この3ポイント分は少なくとも新型インフルエンザの影響とみられる」とした。ただ、「政府の対処方針が変更されたこともあり、自粛は落ち着いてきている」とも述べた。
列車別では、長距離利用者が多い「のぞみ」が15%減で最大の落ち込み。「ひかり」は13%減、「こだま」が11%減だった。東海道新幹線全体の利用客数は景気後退が鮮明になった昨年11月以降、前年同月比割れが続いている。
毎日新聞 5月29日
国立感染症研究所(感染研)は29日、関西で最初に新型インフルエンザの感染が確認された5月16日より2週間以上前の4月28日ごろ、すでに神戸市、大阪府内で患者が発生していた可能性があるとの見方を示した。また、製品評価技術基盤機構と感染研は29日、兵庫県と大阪府で採取した新型の遺伝子を解析した結果、メキシコや米南部での最初の流行と、4月下旬の米東部とカナダでの流行の間に変異して発生したウイルスであることが判明したと発表した。
感染研は、今年1月から新型の発生を監視するため、全国の薬局のインフルエンザ治療薬の処方状況を例年と比較している。
感染研感染症情報センターの大日(おおくさ)康史主任研究官によると、例年はシーズン前半に新型と同じA型インフルエンザが流行し、後半から春先までB型インフルエンザが流行する傾向がある。しかし今年は、神戸市と大阪市周辺地域で4月中旬から下旬にB型の流行が終息。その後の4月28日、神戸市中央区の薬局で治療薬(タミフル、リレンザ)の処方が例年を上回って急増し、流行レベルに達した。大阪府内でも5月1日に池田、枚方市、13日に池田市で同様の状態になった。
同様の現象は茨木市内の高校に通う生徒の感染が確認された翌日の18日に池田、枚方、茨木の3市で起きたほか、京都市右京区に住む専門学校生が発症した20日とその前日にも同区で見られた。このため、感染研は4月末から5月初めの流行も新型だった可能性があるとみている。
一方、同機構によると、韓国で4月末に確認されたメキシコからの帰国患者から採取された遺伝子と似ており、同機構は「メキシコから直接流入した可能性もある」とみている。
大日主任研究官は「大阪、神戸の処方せん数の急増は季節性とは違うという印象だ。流行初期にすでに国内に何らかの形で新型ウイルスが入っていた可能性はある」と話す。【関東晋慈、山田大輔】
◇新型インフルエンザ関連の主なできごと
4月下旬 メキシコや米国で新型インフルエンザ患者や死者が明らかに
28日 WHOが警戒レベルをフェーズ4に引き上げ(日本時間)。日本政府が新型発生を宣言
同日 薬局サーベイランスシステムが神戸市中央区でインフルエンザの流行を検知
5月1日 同システムが大阪市周辺でも流行を検知
9日 成田の検疫でカナダから帰国した大阪府の高校生らの感染確認
16日 海外渡航歴のない神戸市の高校生の感染確認
初の国内感染
17日 渡航歴のない大阪府の高校生らの感染確認
日経新聞 6月1日
【ハノイ=岩本陽一】アジアでは31日も新型インフルエンザの感染拡大が続いた。ベトナムで米国から帰国した学生(23)が初の感染ケースとして確認されたほか中国、台湾、シンガポール、タイでも感染者が増えた。
越国営ラジオ「ベトナムの声」(電子版)は31日、南部ホーチミンで学生の感染が確認され、現在は同地の病院で治療中と報じた。病状は不明。同国の保健省は空港の検疫当局者に感染拡大防止に向けた措置の徹底を指示した。
報道によると中国では北京市や広東省、福建省などで感染例を新たに確認。中国本土の感染者は31日までに29人。台湾でも感染者が増加し、合計12人となった。
毎日新聞 2009年6月1日
100人超の新型インフルエンザ感染者が確認された神戸市で、発症のピークだった5月16〜17日には感染経路の分からない感染者が1割以上に達し、感染が拡大してまん延状態になる危険性があったことが、市保健所と国立感染症研究所の疫学調査で分かった。実際には感染者は減少に向かい、調査に当たった感染研の砂川富正・感染症情報センター主任研究官は「学校の一斉休校と市民の感染予防が拡大防止に役立った」と分析している。
砂川氏らの調査チームは、市内で初めて感染者が確認された16日から2日間を中心に、入院患者ら約50人から聞き取り調査した。約4分の3は高校生で、クラブ活動を中心に感染が拡大。家族間の感染は、患者がいる世帯の8%しかなく、大半は兄弟姉妹だった。
一方、誰から感染したか分からない人は7人いた。うち4人は販売業に従事し、不特定多数と接するうちに感染した可能性が高いという。【清水健二】
毎日新聞 2009年6月1日
100人超の新型インフルエンザ感染者が確認された神戸市で、発症のピークだった5月16〜17日には感染経路の分からない感染者が1割以上に達し、感染が拡大してまん延状態になる危険性があったことが、市保健所と国立感染症研究所の疫学調査で分かった。実際には感染者は減少に向かい、調査に当たった感染研の砂川富正・感染症情報センター主任研究官は「学校の一斉休校と市民の感染予防が拡大防止に役立った」と分析している。
砂川氏らの調査チームは、市内で初めて感染者が確認された16日から2日間を中心に、入院患者ら約50人から聞き取り調査した。約4分の3は高校生で、クラブ活動を中心に感染が拡大。家族間の感染は、患者がいる世帯の8%しかなく、大半は兄弟姉妹だった。
一方、誰から感染したか分からない人は7人いた。うち4人は販売業に従事し、不特定多数と接するうちに感染した可能性が高いという。【清水健二】
朝日新聞 6月4日
厚生労働省は4日、国内で確認された新型の豚インフルエンザ患者について、最も早い発症日は5月5日だったと発表した。神戸市内の男子高校生で、これまでは、同月9日に成田空港での水際検疫で確認された患者を国内初としてきた。それ以前に検疫をすり抜け、ウイルスが国内に入り込んでいたことになる。
厚労省によると、この男子高校生は渡航歴がなく、国内の誰かから感染したとみられる。このため、同省は5月5日以前にも国内に感染者がいたと推測している。
男子高校生は5日にインフルエンザの症状を発症し、翌6日に同市内の医療機関を受診。簡易検査で季節性インフルエンザと診断された。当時、厚労省は米国などへの渡航歴がないと新型インフルを疑う対象にはしておらず、遺伝子検査はしなかった。その後、男子高校生は完治した。
しかし、5月16日に神戸市内で渡航歴のない高校生の感染を国内で初めて確認。これを受け、市の調査の一環で、男子高校生の検体を保管していた医療機関が市環境保健研究所に遺伝子検査を依頼、20日に感染が確認された。
結果はその日のうちに厚労省にも報告されたが、公表してこなかった。厚労省は「国内の発症状況の全体像を確認したうえで、公表すべきだと考えた」と説明。これまでの会見で5月5日以降の日別発症動向で、ピークは73人が発症した5月17日としていた。
男子高校生の周囲にいた濃厚接触者については現在、神戸市と共同で調査を進めているという。(野瀬輝彦)
時事通信 2009年6月5日
【ジュネーブ5日時事】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は5日午後、新型インフルエンザに関する緊急委員会を開いた。会合では、新型インフルエンザに対する警戒レベルの基準見直しに関連して、病気の深刻度の評価などを討議。ただ、世界的大流行を意味する「フェーズ6」への警戒レベル引き上げに関する議論は行われなかった。
WHOによれば、会合では感染者数と症状など新型インフルエンザの現状の深刻度を量と質の両面から検証。その上で、病気の深刻度を評価する際に考慮すべき項目などを議論した。
現在のWHOによる新型インフルエンザの警戒レベルは「フェーズ5」。「フェーズ6」への引き上げをめぐっては、加盟国から新型インフルエンザによる影響の深刻度などを考慮して慎重な見極めを求める意見が出ており、WHOは警戒レベルの基準見直しを進めている。
毎日新聞 6月6日
新型インフルエンザの感染者は、6日に千葉県佐倉市と成田市、横浜市、大阪市、山口県萩市、福岡市で新たに確認され、国内感染者は16都道府県で累計412人に達した。成田空港の検疫で見つかった8人を含めると、累計で420人。
新たな感染者の内訳は、米国から帰国した大阪市の小学生男児(6)▽成田空港ラウンジの従業員で、佐倉市の女性(21)と成田市の女性(23)▽横浜市の男性(27)▽米国から帰国した萩市の男児とその家族の男児▽福岡市の男子中学生。
読売新聞 2009年6月7日
福岡市は7日、同市博多区の市立中学校の生徒5人と、同じ地区の市立小学校の児童6人の計11人が、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に感染していることを確認したと発表した。
この中学校では6日にも別の生徒の感染が確認されており、福岡市の感染者は計12人となった。感染経路は不明だが、同市は集団感染とみている。
同市によると、11人は、最高で39・9度の発熱などの症状があり、7日の遺伝子検査で感染が確認された。全員、市内の病院に入院している。両校など市内の3校では、少なくとも約50人が6日から7日にかけ、発熱症状を訴えていた。
西日本新聞 2009年6月8日
福岡市は7日、同市博多区に住む小中学生11人が新たに新型インフルエンザに感染したと発表した。市内の感染確認は計12人となった。重症者はいないが感染経路は不明。市教委は集団感染が起きたとみて、板付中に加え、校区内にある板付小と板付北小を8日から1週間休校にすることを決めた。
新たに感染が判明したのは、板付中1年の男子生徒4人(12−13歳)と2年の男子生徒(13)、板付小4年の男女児童4人(9−10歳)と6年の男子児童2人(いずれも11歳)。板付中の5人のうち2人は6日に感染が確認された男子生徒(12)と同じクラス。市は両校で集団感染が起きた原因を調べている。
市によると、11人は5−7日、最高で39.9度の熱が出たため、発熱外来を受診。簡易検査でA型陽性となり、詳細(PCR)検査で7日に新型と確認された。いずれも(1)海外渡航歴がない(2人は未確認)(2)県外に行くなど特別な行動をしていない(3)家族は発症していない‐ことから、感染経路は不明という。
12人全員が県の感染症指定医療機関の1つ「市立こども病院・感染症センター」(福岡市中央区)に入院しており、快方に向かっている。会見した吉田宏市長は「市を挙げて感染拡大を防ぐ。市民の皆さんは冷静に対応してほしい」と話した。
◇ ◇
滋賀県は7日、男性(30)の感染を確認。国内感染者は計432人。
●毎日新聞 2009年6月9日
千葉県船橋市は9日、市内の中学3年男女6人(14、15歳)の新型インフルエンザ感染を確認したと発表した。6人は8日に感染が判明した中学3年女子(14)と同じ学校で、今月3〜5日の岩手県への修学旅行で一緒に行動していた。市は既に同校と近隣の小学校2校を休校させている。千葉県内の感染者は計21人になった。【清水隆明】
新型インフル
読売新聞 6月9日
東京都は9日、新たに日野市の男性会社員(41)と、中野区の男子大学生(18)、米シカゴ在住の男児(4)の新型インフルエンザ感染を確認した。3人は米国やカナダから帰国し、帰国前に感染したとみられている。
岩手県も同日、盛岡市内の女性(36)が新型インフルエンザに感染したと発表した。東北地方の感染確認は初めて。
盛岡市の女性が働いている市内の飲食店では、計9人の感染者が出ている千葉県船橋市内の中学校の生徒が5日、修学旅行中に昼食を取った。
千葉、神奈川、広島各県、神戸、福岡両市でも9日、新たな感染者が確認され、同日午後10時半時点で国内で確認された感染者数は483人。
毎日新聞 2009年6月11日
東京都は11日、港区の私立正則高校(永原三千郎校長、894人)の3年生の生徒7人と女性教師(47)の新型インフルエンザ感染が確認されたと発表した。また、同日、千葉市内に住む同校の男性教師(47)も感染が確認された。10日に3年生2人の感染が確認されており、同校の感染者は11人になった。都内では初の学校内での集団感染。同校は最近、海外に渡航する行事などを行っておらず、都などが感染ルートを調べている。
都によると、感染した生徒と教師はいずれも容体が安定している。このうち17歳の男子生徒のケースでは、今月7日夜にのどの痛みがあり、8日、高校からの帰宅後に頭痛やせきが出た。9日には38・6度の発熱があり、学校を休んだ。10日も学校を休み、検査を受けたところ、感染が確認された。同校は17日まで1週間の休校を決めている。都は、近隣学校に休校を要請する措置はとらない方針。
一方、千葉県などは11日、船橋市で4人、習志野市で1人の新型インフルエンザ感染を確認したと発表した。いずれも中学生で、千葉県内の感染者は41人となった。また、船橋市内の感染者は計20人となり、今回の4人を含む16人は3〜5日、岩手県への修学旅行に参加した中学3年生。厚生労働省はこの中学のある学区域を感染拡大防止地域に指定し、注意喚起している。【野口由紀、江畑佳明、山縣章子】
新型インフル
読売新聞 6月11日
【ジュネーブ=平本秀樹】世界保健機関(WHO)は11日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の警戒水準をめぐって専門家による緊急委員会を開催し、同委はマーガレット・チャン事務局長に対し、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高の「フェーズ6」への引き上げを勧告した。
WHO関係者が本紙に明らかにした。チャン事務局長は同日夕(日本時間12日未明)、記者会見で引き上げを宣言する。
メキシコ、米国で4月以後、急速に広がった新型インフルエンザは、WHOによると11日までに世界74か国・地域に拡散し、感染者は2万7000人以上に達する。感染者の増大は、冬に入った南半球で顕著で、オーストラリアでは毎日100人のペースで増え、1200人を超した。
WHOの警戒水準は地理的な広がりを尺度に定められており、フェーズ6は、世界の2地域で人から人への持続的感染が起きていることが条件。北米に加え豪州でも人から人への持続的感染が確認されたため、フェーズ6への引き上げが避けられなくなった。
チャン事務局長は、感染者の大半の症状が軽度であることを踏まえ、警戒水準引き上げに当たって、渡航制限や企業活動自粛など人やモノの移動を制限する措置が必要ないことを説明し、各国に冷静な対応を求める。
新型インフルエンザの世界的大流行は死者100万人に及んだとされる1968年の「香港風邪」以来41年ぶり。
新型インフルエンザが拡大する過程では、警戒水準が各国の対策を左右するだけに、ウイルスの地理的な広がりだけでなく、病原性の強弱を表す新たな尺度の必要性も認識された。WHOは今回は「重症」「中度」「軽症」の3段階のうち「中度」としている。
WHOは新型インフルエンザの警戒水準を4月29日にフェーズ5に引き上げた。
5月初め、英国やスペインでも感染者が増大し、フェーズ6への引き上げが本格的に検討されたが、世界的大流行を宣言することによる経済的、社会的影響への懸念から、欧州諸国のほか日本や中国が反対したため、引き上げは見送られていた。
東京新聞 6月12日
【ジュネーブ12日共同】世界保健機関(WHO)が11日に宣言した新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)について、WHOの進藤奈邦子医務官は同日、記者会見し「今後3年間はパンデミック状態が続く」と述べ、警戒水準(フェーズ)が最高位の「6」に長期間据え置かれるとの見通しを明らかにした。
医務官は「今後は(冬を迎える)南半球の動向を注視する必要がある」とした上で「感染者は米国など北半球でも増加し、新型ウイルスが衰える気配はない」と安易な終息ムードを戒めた。
フェーズ6の期間中、世界の多くの人が新型ウイルスに感染して免疫を獲得したり、ワクチンで感染被害を抑え込むことなどにより、患者数は徐々に減少。新型ウイルスはその後、通常の季節性インフルエンザウイルスと同じ扱いになるという。
また、進藤医務官はこれから季節性インフルエンザの流行期に入る南半球について「季節性と新型の双方が同時に流行する可能性がある」と指摘。さらに、双方のウイルスが交雑し、抗ウイルス剤、タミフルに対する耐性を持った新型ウイルスが発生する危険性があるとの懸念も示した。
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東京新聞 2009年6月14日
国内の新型インフルエンザの感染者は13日午後、初確認となった長野県や鹿児島市のほか、千葉県、東京都、横浜市、大阪府、京都府、福岡県、福岡市で新たに確認され、計594人になった。
長野県で確認されたのは、飯田市在住の27歳の女性で、1日から9日まで米ハワイに行っていた。頭痛や鼻汁の症状があり、体温は37・4度という。
一方、鹿児島市で確認されたのは、単身赴任先の福岡市から帰省していた40代の会社員男性。
東京都は5人で、11日に米ミネソタ州から帰国した12歳と10歳男児2人、マニラ経由で来日した米国人男性(54)、集団感染が発生した私立正則高校(港区)の男子生徒(18)と男性教師(54)。
千葉県船橋市では、同じ中学の男女生徒と家族の8人。横浜市は1人で、ハワイから帰国した男性会社員(33)。京都府亀岡市内の親族宅を訪ねた米国在住の10歳未満の男児、米国から帰国した大阪府高槻市の会社員男性(39)、福岡県春日市の女児(3)、福岡市の小2女児(8)とカナダから帰国した女性(21)も感染が判明した。
毎日新聞 2009年6月15日
新型インフルエンザウイルス(H1N1型)の一部に、人に感染しやすくなる原因とみられる変異が見つかったことを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らのチームが15日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)で発表した。
インフルエンザウイルスは、表面の突起状のたんぱく質(HA)が人や豚などの細胞にくっついて感染する。河岡教授はいくつかの新型ウイルスのHA部分のアミノ酸配列を調べたところ、従来の豚型ウイルスの一部が変異していた。同じ変異は強毒性鳥型ウイルス(H5N1型)が人に感染した際にも見つかっている。
河岡教授は「今は新型ウイルスが人に適応している過程にあるとみられる。南半球での流行をへて、ウイルス表面の変異がさらに広がると、人への感染力が強まる可能性がある」と話している。【関東晋慈】
毎日新聞 2009年6月17日
もし、強毒性だったら−−。世界的大流行(パンデミック)となった現在の弱毒性より手ごわい強毒性の新型インフルエンザが流行し、鉄道の乗車規制をした場合、首都圏の輸送人員が平常時の1割まで落ち込むことが、国土交通省の試算で分かった。一方、農林水産省は、強毒性が流行すれば外出時のリスクが高まるとして、家庭での食料品備蓄を勧めている。担当者は「今だからこそ、最悪のケースを考えて」と話す。【石原聖、奥山智己】
国交省によると、首都圏の鉄道輸送人員が通常の1割になると想定されるのは、せきやくしゃみなどによる感染拡大を防ぐため車内で乗客同士が2メートルの間隔を空けられるよう乗車制限した場合。出勤できない人が増え、山手線の内側の昼間人口はいつもの3分の1になるという。
強毒性を前提に大流行時の出勤率などを推計するため、同省国土交通政策研究所が1〜2月、山手線の内側に通勤する東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城の5都県の在住者を対象にインターネットで調査。2000人の有効回答と鉄道の輸送力、人口動態などから試算した。
山手線の内側に電車通勤する人は、現在1日に約300万人いる。調査では25%が大流行時には「出勤しない」と回答。他地域に一時避難する人なども加味し、出勤者は約197万人に減ると推計した。しかし、乗客同士で2メートルの間隔を空ける措置をとると、輸送人員は53万人に減るうえ、鉄道会社の社員の4割が感染などで欠勤すると想定され、輸送力はさらにダウン。27万人を運ぶのが精いっぱいという。この場合、山手線内側の昼間人口は現在の601万人から207万人になる。
試算は、感染拡大防止と鉄道の通常業務が両立困難であることを示している。
◇食料品備蓄は2週間分目安
農水省が推奨する強毒性流行の場合の食料備蓄は、2週間分が目安。品目としては「保存性が高くエネルギーの供給源となる米が最適」と米中心の備蓄を勧めている。災害時と違い、ガスや水道などが使える可能性が高いことから、タマネギなど日持ちする野菜や乾めん、加工食品なども便利という。
同省は4人家族が2週間生活する場合の備蓄量を例示している。米10キロ以上▽中華めんやインスタントめんなど16食▽サツマイモなど野菜類各1〜2キロ▽魚介や肉類の缶詰30缶▽レトルト食品30食▽冷凍食品10袋▽乾燥食品▽スープ類12食−−などだ。同省の調査では、約7割が「備蓄なし」と回答している。
◇強毒性と弱毒性
世界保健機関(WHO)などが想定する強毒性インフルエンザは本来、鳥インフルエンザの分類。鳥が強毒性(H5N1型)に感染すると、ほぼ100%死ぬ。H5N1型は世界中で400人以上に感染(4月8日現在)しており、全身症状を示して致死率は6割を超えている。現在世界で大流行している豚由来の新型インフルエンザやA香港型、Aソ連型の季節性インフルエンザも弱毒性。
読売新聞 6月20日
中国の患者から採取した新型インフルエンザウイルスが、人の体内で効率よく増殖する能力を獲得していたことが19日わかった。
東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)によると、この新型ウイルスは上海市の女性患者(22)から先月31日に採取された。世界中のウイルスの遺伝情報を集めたデータベースに登録されていたものを、河岡教授が分析した。新型ウイルスは、豚と鳥、人のウイルスが混ざり合ってできている。増殖にかかわる遺伝子は鳥由来で、鳥の体温(42度)で最も効率的に増える。
ところが、上海で見つかったウイルスは、この遺伝子が1文字分だけ変異して、人の体温(36度)で、効率的に増殖できるように変化していた。
マウスの実験では、ウイルスのこの部分を変化させると、増殖力が爆発的に増え、病原性が高まることが分かっている。
日経新聞 6月20日
【ワシントン=弟子丸幸子】各国政府・保健当局の発表などによると、新型インフルエンザの感染者数が19日、世界の87カ国・地域で5万269人(米国は感染の疑いが濃厚な人を含む)となり、5万人を超えた。このうち約2万人超は米国が占める。死者数は10カ国で229人。
毎日新聞6月28日
新型インフルエンザ対策の現状と課題について、東北大大学院の押谷仁教授(微生物学)は25日、仙台市内で講演し「収束したとみられているが、国内でも感染拡大は続いており、今後6カ月以内に重症化する人が出てもおかしくない。重症化に対応する医療体制の整備が大きな課題」と警鐘を鳴らした。
押谷教授は、新型インフルエンザは現在、米国で死者が増加していると指摘。ニューヨーク市では今月2日までの入院者数は341人、死者は7人だったが、19日には入院者数は748人、死者は30人に達したと説明した。日本でも10日以降、1日当たり40〜50人の発症が報告されており、感染源が特定されていない例も多いことを明らかにした。
押谷教授は「既往症のある人や免疫力の弱い幼児や妊婦は重症化する可能性が高い」と指摘。国内では集中治療室(ICU)や人工呼吸器、産科医などの医療スタッフが不足していることから「地域医療の弱体化が重症化例を生むことも考えられる」と述べた。【比嘉洋】
FNNニュース 6月27日
CDC(アメリカ疾病対策センター)は26日、アメリカの新型インフルエンザの感染者が推計100万人を超えるとの見方を示した。
CDCのシュケット博士は26日、「全米の新型インフルエンザ感染者は、2009年に入り100万人以上にのぼっている」と話した。
アメリカ国内では、これまでに2万7,000人以上の感染と、127人の死亡が確認されている。
しかしCDCは26日、「確認数は氷山の一角にすぎない」としたうえで、これまでの感染者は、延べ100万人以上になるとの推計をまとめた。
中でも、ニューヨーク市では50万人以上が感染した可能性があるという。
CDCは、季節性のインフルエンザが流行する秋以降、新型インフルエンザが強毒性になる可能性があるとして、アメリカ国民に対し注意を呼びかけている。
読売新聞)2009年6月30日
米CDC「真夏に消滅」撤回
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染者が、世界で増え続けている。世界保健機関(WHO)がウイルスの警戒水準を「フェーズ6」に引き上げ、世界的大流行を宣言してから半月余り。
ウイルスが活発化する冬に入った南半球だけでなく、夏を迎える北半球でもウイルスは依然、広がっており、病原性を増すようなウイルスの変化にも警戒を怠れない。(ワシントン 山田哲朗、バンコク 田原徳容、ジャカルタ 林英彰、ジュネーブ 平本秀樹)
南半球で急増
新型インフルエンザが最初に発生したメキシコのリゾート地カンクンで7月1〜3日、WHOのマーガレット・チャン事務局長や日本の厚生労働省幹部も参加して、国際会議が開かれる。新型インフルエンザ対策を練り直すのが狙いだ。
メキシコと共に最初に感染が広がった米国は、感染が確認された人が2万人を超えており、今も世界最大の感染国だ。米疾病対策センター(CDC)による25日の集計では、感染者は1週間前より6000人以上増え、感染の勢いは加速している。
CDCは当初、「北半球でウイルスは、真夏になれば消える」と予測したが、秋冬の流行シーズンまでじりじりと感染が続くとの見通しに改めた。CDCは26日、受診していない軽症患者を入れると全米の感染者はすでに100万人以上に上るとの推計を示した。
南半球では、感染拡大の勢いはさらに著しい。WHOによると、豪州と南米アルゼンチン、チリの3か国の感染者の合計は、26日までの1週間で3600人増えて、9800人を超えた。人口当たりだと、米国の2倍以上のテンポだ。
28日実施のアルゼンチン議会選挙では、マスクをかけて投票する有権者が目立った。
同じ南半球でも、サハラ以南のアフリカ地域では、感染例は今のところごく少ない。だが、医療関係者の間で、貧困ゆえに病院に行けない住民の間に、流行がすでに広がっているのではないかと危惧(きぐ)されている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)地域では、加盟10か国すべてで新型インフルエンザ感染者が確認されている。タイやフィリピン、シンガポールでは、連日数十〜百数十人のペースで感染者が増えている。特に学校や飲食店、軍施設での集団感染が目立つ。
フィリピンでは、死亡した感染者が下院の職員だったため、23日以後、下院が閉鎖されている。
ASEANの中でも所得水準が低い、カンボジアやラオス、ミャンマーで6月下旬に最初の感染者が出た。カンボジア保健省の担当者は「爆発的に増えれば対応が難しい。先進国の支援が必要」と訴えた。
「鳥」との混合警戒
インドネシア上陸
インドネシアでは24日、2人の感染例が初めて確認され、感染者は28日に8人に増えた。
インドネシアは、高い致死率を持つ強毒性の鳥インフルエンザの世界最大の流行地域で、4年ほどの間に100人以上が死亡している。鳥インフルエンザは今年も中部ジャワ州プルバリンガ県の20村で鶏へ感染が広がっている。新型インフルエンザの上陸で、二つのウイルスが混ざり合い、致死率、感染力ともに強力な新たなウイルスが出現する可能性が懸念されている。
永井美之・理化学研究所感染症研究ネットワーク支援センター長は、「理論的に、新型インフルエンザとH5N1型鳥インフルエンザのウイルスが、豚や人の体内で混じり合って新しいウイルスが生まれる可能性がある」と指摘する。
チャンWHO事務局長は25日、記者団に、「ウイルスの動きはまったく予測できない」と述べ、ウイルス遺伝子の監視に力を入れていく方針を強調した。
国内「長期戦覚悟」
国内では、関西での新型インフルエンザの感染が一時のピークを過ぎた後も、各地で感染者が相次いで見つかっている。厚生労働省などによると、感染者数は29日午前11時現在で42都道府県1214人(検疫、在日米軍基地を含む)に達した。世界的にみても9番目(26日現在)に多いという。
6月に入って気温が上昇しても感染が続き、20歳代以下が感染者の8割を占めるなど、季節性インフルエンザと異なる傾向を示す。ただ、現時点で重症化した症例はなく、約7割はすでに治癒している。
岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長は「感染経路がはっきり分からないケースが増えている。地域的にもばらけており、感染がくすぶっている」として、今後も断続的に感染が広がると予想する。政府の諮問委員会委員長の尾身茂・自治医大教授も「秋冬に、感染が大きく広がる可能性が高い。長期戦の覚悟をした方がよい」と注意を呼びかける。
政府は秋以降の第2波に備え、感染者は原則、全医療機関で受診し、重症者以外は自宅療養とする方針を示した。新型向けのワクチンは、国内4メーカーが来月にも製造に着手する方針だ。(科学部 高田真之)
毎日新聞 2009年7月14日
新型インフルエンザに対する免疫を1918年以前に生まれた人は持っている可能性があることを、東京大医科学研究所などが明らかにした。また、新型ウイルスは季節性と違い、肺で増殖するなど強い毒性を持つことが動物実験で示された。医科研の河岡義裕教授(ウイルス学)は「秋冬の流行時には広い世代で早期治療を心がける必要がある」と注意を促している。13日の英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された。
河岡教授らは、献血などのため新潟大などに保管されていた日本人約250人の血液を調べた。新型ウイルスに対する抗体を持っていたのは、多くがスペイン風邪が発生した1918年より前に生まれた人だった。
新型インフルエンザに関して、米疾病対策センター(CDC)などの調査から60歳以上に免疫がある可能性が指摘されている。だが、河岡教授は「18年のウイルスは人で流行するうちに大きく変異した。一方、新型ウイルスはほとんど変異しないまま豚で流行していたため、20年代以降に生まれた人に免疫はないとみられる」と指摘している。
さらに、イタチの仲間で実験したところ、新型ウイルスに感染させた3匹は気道内で広く増殖して肺に侵入し増殖するのに対し、季節性に感染させた3匹は鼻などの上気道にとどまった。
米国などでも健康な人がウイルス性肺炎を起こして重症化する例がある。河岡教授は「新型ウイルスには季節性にはない毒性があることを示す結果で、今後さらに毒性を増す恐れもある。60〜80代の高齢者も免疫がないとみられ、十分な警戒が必要だ」と話している。【関東晋慈】
毎日新聞 2009年7月16日
【ジャカルタ支局】オーストラリア保健省は15日、同国の新型インフルエンザ感染者数が1万人を超え、1万389人になったことを公表した。ロイター通信によると、南米チリの保健省も14日、同国の染者数が1万人を超えたと発表。現在冬の南半球での感染拡大に、世界保健機関(WHO)や関係国は警戒を強めている。
毎日新聞 7月23日
厚生労働省は22日、感染症法施行規則を改正し、5月の国内発生以来続けてきた新型インフルエンザ患者の全数把握を中止することを決めた。大流行の恐れがある秋以降、新型か従来の季節性インフルエンザか確定する遺伝子検査の作業が追い付かなくなることが予想されるほか、どちらも治療法に大差がなく、確定診断そのものの必要性も低いため。24日からは、学校などで集団感染が起きた場合の一部についてのみ報告を求める。
厚労省によると、22日午前11時現在、都道府県などから報告があった国内の新型インフルエンザ患者は4433人。秋以降に大流行した場合、数千万人の感染の恐れがあるとされる。既に米国など多くの発生国は患者の全数把握をしていない。
新たな方針は、集団感染の早期発見に力点を置き、学校や職場など10人以上の集団で1週間に2人以上の疑い例が出た場合に限り、医療機関から保健所への連絡を求める。都道府県や政令市は原則的に最初の1例だけを遺伝子検査し、新型と確定すれば国に報告。それ以降は「疑い例」として届け出て、重症化したケースを除き遺伝子検査はしない。
一方、ウイルスの毒性変化を監視するため、国内約500カ所の定点医療機関に限り、症状のある全患者の検体を採取し、集団感染でなくても遺伝子検査に回す。【清水健二】
読売新聞 7月23日
栃木県は23日、新型インフルエンザに感染した県東部在住の小学生女児が急性脳炎(インフルエンザ脳症)を発症したと発表した。
新型インフルエンザ感染者の急性脳炎発症が確認されたのは、国内では川崎市の小学生男児に続き2例目。
県によると、女児は21日から発熱やせきの症状があり、22日に医療機関の簡易検査で新型インフルエンザ陽性と判断されたが、症状が軽かったため、治療薬リレンザを投与され、自宅療養していた。
22日夜にめまいなどの意識障害を示したため、宇都宮市内の感染症指定医療機関に入院した。
23日現在、38・5度の発熱と意識障害があるが、呼び掛けには答えているという。女児や家族に渡航歴はない。
インフル
読売新聞 2009年7月25日
【ワシントン=山田哲朗】米疾病対策センター(CDC)は24日、米国内の新型インフルエンザの感染者が、先週17日の集計より3154人増えて4万3771人に、死者が39人増えて302人となったと発表した。
感染しても病院に行かなかったり、医師が検査しなかったりする例も多く、実際には全米で100万人を超える感染者がいると推定されている。
CDCは24日の記者会見で「数字は氷山の一角にすぎない」として、毎週更新してきた集計は今回を最後にやめる方針を示した。
朝日新聞 2009年7月25日
【ワシントン=勝田敏彦】米疾病対策センター(CDC)は24日の記者会見で、新型インフルエンザに感染したり、感染した家族らの手当てをしたりするため、今年から来年にかけて、最悪で米国の労働者の4割が仕事を休むと想定していることを明らかにした。
AP通信によると、CDCは米国で7万人が死亡したアジア風邪(1957年)のデータを基礎に、新型対応のワクチン接種の効果がみられないなど最悪のケースを想定して計算。CDCのシュキャット博士は「私たちはこうした想定にどう向き合うべきかを話し合ってきた。ただ、今はそこまで休業率は高くならないと思っている」と述べた。
同日のまとめでは、米国で新型インフルエンザ感染が確認された人は4万3771人で死者は302人。同博士は「氷山の一角」としており、夏休み期間中、児童・生徒が参加する夏季キャンプで「多数の感染が起きている」と話した。
インフル
読売新聞 2009年7月27日
新型インフルエンザが急速に広がっている冬の南半球で、1人の新型インフルエンザ感染者から何人に感染させるかを意味する「再生産数」が、1・96と推定されることが、ユトレヒト大(オランダ)の西浦博研究員らの調査でわかった。
ニュージーランドの医学誌に掲載された。
季節性インフルエンザ(1・1〜1・4)を上回る値で、日本でも秋以降に予想される流行で、多数の感染者が出る恐れがある。
調査では、6月初旬以降に、海外から持ち込まれた事例を除く、ニュージーランドの国内感染者数の推移を分析し、平均1・96と推定した。
この数字をもとに試算すると、感染防止策などがない場合、大流行が終息するまでに人口の78・6%が感染するとしている。
今回の結果は、流行初期にメキシコで報告された1・4〜1・6よりも高い。
研究チームは、冬季に感染が広がりやすく、再生産数が大きくなった可能性もあるとしている。
毎日新聞 2009年8月5日
【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)は4日、新型インフルエンザH1N1による全世界の死者が7月末時点で1154人に達し、1000人を超えたことを明らかにした。このうち1008人が、北米と南米を合わせた米州地域での死者だった。
WHOに報告があった感染確認例は、7月末時点で168カ国・地域の16万2380人。だが、感染者が多い国では感染が疑われる患者全員の遺伝子検査を行っておらず、WHO報道官は「実際の患者数は誰にも分からない」としている。
WHOは、症状を重くするようなウイルス変異が起きることを警戒しているが、今のところ、そうした変異は確認されていない。抗インフルエンザ薬「タミフル」に対する耐性を持つウイルスが6症例で確認され、このうち3症例は日本で、残りは、デンマークと香港、カナダが各1症例だった。
読売新聞 8月10日
【ワシントン=山田哲朗】米政府は、新型インフルエンザでは原則として学校を閉鎖する必要はないとする指針を発表した。
米政府は4月、感染者が出た学校は2週間、閉鎖するとの方針を定め、700校以上が休校した。しかし、親が仕事に出かけられなかったり、昼食を食べられない子供が出たりするなど影響が予想以上に大きかった。
子供を商店街や図書館などに連れ出す家庭も多かったため効果は薄く、5月には「休校せず、感染者だけが7日間、登校しない」と指針を緩和した。新学期に向け、改めて指針で原則開校を強調した。感染者が家にとどまる期間も「熱が下がってから24時間以上」と短くした。
米疾病対策センター(CDC)のトーマス・フリーデン所長は「休校措置は社会的なコストとのバランスを考えるべきで、休校が必要になることはあまりない」と述べた。
NHK 2009年8月12日
新型インフルエンザの患者の数が真夏のこの時期になっても急増している可能性があることが、国立感染症研究所の調査でわかりました。専門家は、このまま患者が増えて学校が始まる9月ごろに全国的な流行が始まるおそれがあると指摘しています。
国立感染症研究所では毎週、全国のおよそ4800の医療機関から報告されるインフルエンザの患者の数をまとめていますが、今月2日までの1週間は、患者が2655人となり、前の週の2倍に増えています。過去10年間、この時期の患者の数は13人から500人程度で、ことしは例年になく多く、真夏にこれだけ急増したこともないということです。調査では、新型インフルエンザと従来の季節性インフルエンザを区別していませんが、国立感染症研究所によりますと、多くは新型インフルエンザの患者とみられるということです。この調査では1つの医療機関当たりの平均の患者の数が1人を超えると全国的な流行が始まったとされますが、今回の報告で平均の患者数は、すでに0.56人に達しています。医療機関当たりの平均の患者数を都道府県別にみてみますと、沖縄県が最も多く、大阪府、東京都などの順になっています。国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「調査結果から推定すると、この1週間で全国的には2万人から3万人の患者が出ているとみられる。これからお盆休みで人が移動するため、ウイルスが全国に広がるおそれがあり、さらに9月になって学校が始まると感染者が急激に増えることが考えられるので注意が必要だ」と話しています。
毎日新聞 2009年8月15日
沖縄県は15日、新型インフルエンザに感染した同県宜野湾市の57歳男性が同日午前6時54分、入院先の病院で死亡したことを明らかにした。家族などに感染者はおらず、感染源は不明という。新型インフルエンザ患者の死亡は国内では初めて。
同県によると、男性は慢性腎不全で透析を受けており、過去に心筋梗塞(こうそく)を起こしたこともあった。9日に風邪のような症状が出て、10日に透析を受けた際、熱があったためインフルエンザの簡易検査を受けた。この時は陰性だったが、12日の透析の際に熱が39度まで上がり、再検査でA型陽性と判明。同日から入院していた。
同県は、死亡原因について「心疾患や慢性腎不全が合併していたうえ、インフルエンザに罹患(りかん)したためと思われる」としている。【三森輝久】
読売新聞 8月16日
新型インフルエンザによる国内初の死亡例は、慢性腎不全で人工透析を受けていた男性だった。
新型インフルエンザは感染しても、ほとんどの人が軽症のまま治癒するが、今回のように持病のある人は重症化しやすい。秋冬の本格的な流行シーズンを前に、改めて注意が必要だ。
国内初の死亡例は、まさに新型インフルエンザで犠牲者が出ることが懸念されていた典型的なケースだった。
亡くなった男性のように腎不全で人工透析を受けていると、免疫機能が低下し、感染症にかかって、肺炎なども併発しやすいからだ。世界保健機関(WHO)や厚生労働省は、人工透析患者のほか、糖尿病やぜんそくなどの持病のある人、妊婦、乳幼児は、感染すると重症化する危険性が高いと、繰り返し注意喚起していた。
国立感染症研究所の田代真人・インフルエンザウイルス研究センター長は「感染者が増え、死者はいつ出てもおかしくなかった。ウイルスの病原性が強まったり、感染力が上がったりしたわけではない。いたずらにパニックになる必要はない」と平静を呼びかける。
新型インフルエンザに感染してもほとんどの人は、軽症で治癒している。WHOによると、重症者の半数以上は、妊婦や、糖尿病、心臓疾患、ぜんそくなどの持病を抱えた人だった。米ニューヨーク市では、入院患者の8割が、妊婦と2歳未満の乳幼児、持病のある患者だった。
持病があると、重症化しやすいのは、病気を防ぐ免疫力が落ちるからだ。
例えば、今回のように腎機能が悪くなり、人工透析を受けると、透析によって毒素と一緒にアミノ酸など体の維持に必要な成分も排出してしまい、免疫力が落ちてしまう。
糖尿病の場合も、血糖値が高くなると免疫機能をつかさどる白血球の働きが悪くなる。季節性インフルエンザでも、健康な人に比べて死に至る危険性が1・5倍高いという研究もある。
病気ではないが、妊婦も胎児を異物と認識しないよう免疫力を抑制しており、新型インフルエンザに注意が必要だ。日本産婦人科医会は今年5月、妊婦が新型インフルエンザに感染した場合、抗ウイルス薬で積極的に治療するよう勧めた。
新型インフルエンザの犠牲者を減らすためには、抗ウイルス薬による早期治療に加え、こうしたリスクの高い人たちへの感染を防ぐことが大切だ。厚生労働省は秋冬の大流行に備え、5300万人分のワクチンを準備する方針だが、国内生産量は年内で1400万〜1700万人分しかなく、緊急輸入も検討している。浦島充佳・東京慈恵医大准教授(公衆衛生学)は「希望者全員に接種するのは間に合わない。優先順位をどうするのか、早急な議論が必要」と話している。(科学部 本間雅江、高田真之、米山粛彦)
朝日新聞 2008何8月18日
新型インフルエンザの米国とカナダでの致死率が約0.5%に上ると推定されることがオランダ・ユトレヒト大学の西浦博研究員(理論疫学)らの分析でわかった。通常の季節性インフルエンザの致死率は0.1%か、それ以下と推定されており、ほぼ5倍以上になる。米科学誌プロスワンに近く報告する。
世界保健機関(WHO)などの研究チームも今年5月、最初に感染者が相次いだメキシコでの新型インフルの致死率を約0.4%と見積もっていた。1957〜58年に流行したアジアかぜの致死率は約0.5%と推定されており、新型インフルの致死率も同程度とみられる。
感染者は現在も増え続けていることから、西浦研究員らは流行初期のデータから、患者と確認された確定診断者が死亡する確率を推定した。
WHOによると、14日時点の死者は米国が436人、カナダは66人。
日本では死亡例はこれまで15日の1人だけ。致死率が低いのは、持病のない未成年者が患者に多いことに加え、治療薬タミフルの投与、ぜんそくや糖尿病の治療が行き届いていることが理由に考えられるという。(小堀龍之)
毎日新聞 8月18日
国内の新型インフルエンザ感染が全国的な流行水準にほぼ達していることが18日、国立感染症研究所の調べで分かった。今月3〜9日に全国約4700の定点医療機関から4630人のインフルエンザ感染報告があり、1機関当たり平均0.99で、感染研が「流行」と判断する平均「1」に迫った。夏場では異例の多さで、舛添要一厚生労働相は19日に緊急会見し、国民に感染予防と冷静な対応を呼び掛ける。
感染研は「感染症サーベイランス(監視)」として、全国の定点医療機関から週ごとに患者数の報告を受けており、1機関当たりの感染報告が1週間で平均1以上あると、全国的な流行と判断している。例年、6〜10月ごろの報告数は0.1未満が続くが、今年は7月から増加傾向になり、7月20〜26日が0.28、同27日〜8月2日が0.56に達していた。0.99となった同3〜9日の推計受診患者は6万人に上る。それ以降も増えている可能性が高い。
都道府県別では▽沖縄(20.36)▽奈良(1.85)▽大阪(1.80)▽東京(1.68)▽長崎(1.50)▽長野(1.44)の6都府県で既に平均1を超え、ほかに17府県が0.5以上。保健所の管内別では34都府県の139地域で1を超えているという。
全国の地方衛生研究所で分析したウイルスの型は新型が約8割を占め、残りの大半はA香港型。感染研は、7月以降の感染者はほぼ全員が新型と推測している。
一方、厚労省によると、新型の感染者の全数把握を中止した7月24日以降、今月9日現在で1066件の集団感染の報告があり、11日までに119人が入院している。厚労省は「夏休み明けに集団感染が起きないよう、特に学校で対策を徹底してほしい」と訴えている。【清水健二】
朝日新聞 8月20日
冬を待たずに新型インフルエンザが本格的に流行し始めた。各地で死亡や重症例の報告が相次ぎ、自治体などは再び警戒を呼びかける。マスクなどの用品はメーカーが増産に力を入れ、専用売り場を設ける小売店も。夏休み明けの感染拡大を防ごうと、学校現場での取り組みも始まった。
学校の部活動などで集団感染の疑い例が相次いでいる埼玉県では、2学期が始まるのを前に県教委が通知を作成中だ。全国で子どもの重症化が報告されていることを念頭に、ぜんそくや糖尿病の持病がある子どもを学校内で把握し、早めの配慮を求めるといった内容になる。学級閉鎖や出席停止期間の目安のほか、秋に多い文化祭、運動会、修学旅行など行事への対応についても基準を示したいという。担当者は「6月の修学旅行を秋に延期した学校も多い。今振り返ると、あの時に行っていた方がよかったかもしれない」と苦渋の表情を浮かべる。
東北地方は夏休みが終わるのも早く、岩手県では20日、新学期の始業式が開かれる学校もあった。盛岡市立北松園小学校では養護教諭が約360人の児童を前に新型インフルエンザの流行について話し、「手洗いとうがいをしっかりしてください。体調が悪いときはお医者さんを受診すること」と呼びかけた。小向和秀校長は「学級閉鎖や学校閉鎖にならないよう、状況を把握しながら対応をとりたい」と話す。
岐阜県は県内約270の医療機関と、公私立の約730の全小中高校で、感染者が発生した場合、人数や症状を入力するシステムを導入し、9月20日に運用を始める考えだ。県対策本部や県教育委員会は「全県規模の導入は全国初ではないか」とし、「感染の早期発見や急拡大の防止に役立てたい」としている。
群馬県太田市教委は今冬の流行期までに、市立小、中学校のすべての教室約720カ所に加湿器を設置する方向で検討している。「新型インフルでは、全国的には重篤な症状も報道されており、子供たちの安全・安心のため最大限努力したい」(健康教育課)という。
感染者が増えている東京都でも都教委が18日、関係部署や学校に通知を送付した。(1)発熱があれば登校しない(2)せきやたんなどの症状が出たら医師に受診(3)担任が始業日に児童生徒の健康状態をチェックする(4)インフルエンザのような症状のある児童生徒が1週間に2人以上いた場合、地域の保健所に連絡する――などを求めている。
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新型インフルエンザの感染が国内で初めて確認された5月以降、マスクを購入する人が相次ぎ、各地で品切れとなった。家庭用マスクの大手メーカー「ユニ・チャーム」はそれ以来、24時間態勢で生産を続けている。「マスクメーカーの責務として、品切れの状況は避ける」(同社広報)とし、盆休みも返上し、前年比約3倍の増産を目指す。9月下旬からは、新型インフルエンザ対応で、「医療機関でも使えるレベル」の新しい立体型マスクの発売も開始する。
15日に国内初の死亡者が出て以来、同社のお客様相談センターには、「どんなマスクがいいのか」などといった問い合わせが相次いでいるという。広報担当者は「流行時期が読めないので、常に最大限の態勢をとるしかない」としている。
別の大手マスクメーカーも、工場をフル稼働させて前年比1.5倍を生産する。「春は想像を絶する発注が入って大変だった。今後の流行は予測できないが、設備の拡充や増強で対応していく」
イオンは9月1日の防災の日に合わせ、スーパー「ジャスコ」などに、防災関係の商品とともに、新型インフルエンザ対策グッズの特設コーナーを設置するよう、全国で約500ある店舗に指示した。ウイルス対策の使い捨てマスクやアルコールの消毒液などを、防災用品とともに準備している。
東京都江東区のジャスコ東雲店では、店の入り口にコーナーが設けられ、マスクが積み上げられた。2、3箱のマスクを一度に買い物かごに入れる高齢者や子ども連れもいた。
担当者は「たまたま、本格的な流行と重なった。今後、お客からマスクや消毒薬を求める声が増えれば、対応したい」と話している。
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東京都は20日午前10時15分から、都庁で危機管理対策会議を開いた。各局幹部らが出席し、医療機関と連携した監視体制の構築や、予防策の都民への周知徹底など、改めて対策を確認した。
会議の冒頭であいさつした菅原秀夫副知事は、「例年と異なり、都内でも7月下旬から患者が急増しており、秋以降の感染拡大が予測される」と危機感を強調し、集団感染の早期把握態勢の確立などを進めるとした。都内では、7月24日〜8月16日に、小中学校、高校、保育園などで計150例の集団感染が確認された。これまでに報告された患者数は、疑似症例を合わせて計900人以上にのぼる。
19日からは、衆院総選挙の期日前投票も始まっている。千葉県船橋市では、インフルエンザの感染拡大を防ぐため、市内4カ所の期日前投票所の出入り口に消毒液を設置している。投票日の30日には同市内84の投票所にも置く予定だ。
6月下旬にあった船橋市長選では、投票所となっていた中学校で告示前に集団感染が確認され、市長選関係の施設の消毒を徹底し、投票所に消毒液を置いた。
群馬県伊勢崎市の華蔵寺公園遊園地では、子どもたちが夏休みに入った7月下旬から、園内のトイレ2カ所の出入り口にアルコール消毒液を置いている。新型インフルの勢いが落ちた6月にいったん外したが、再び猛威をふるい始めたことから再開した。
毎日新聞 8月21日
厚生労働省は21日、新型インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表した。今月10〜16日に全国約4600の定点医療機関から報告があった患者数は7750人に上り、1施設当たり、流行水準の「1人」を超える1.69人に達した。インフルエンザの夏場の流行は、国が82年に調査を始めて以来初めて。厚労省は「経験のない状況に直面している」として、新学期を前に感染拡大を防ぐ対策の徹底を呼び掛けた。
新型インフルエンザ患者は7月後半から増え始め、定点(1施設当たり)の報告は7月20〜26日が0.28、同27日〜8月2日が0.56、同3〜9日が0.99だった。10〜16日に全国で受診した推計患者数は、前週より5万人多い11万人で、大半が新型の感染者とみられる。夏場の流行について、厚労省は「免疫がないため感染が広がりやすいが、理由は分からない」としている。
地域別では、沖縄県が29.60と突出して高く、奈良、滋賀、福島、東京、大阪、茨城、高知の7都府県で2を超えた。保健所単位では北海道、富山、熊本を除く44都府県で1を超える地域がある。
季節性インフルエンザの場合、定点報告数が1を超えると感染は拡大の一途をたどり、流行開始から6週間前後でピークを迎える。ここ10年のピークは最大が05年の50.07、最少が01年の10.59。感染力や気象条件が異なるため、厚労省は「新型のピークがいつ、どの程度になるかは予測がつかない」と話す。
新型インフルエンザは、大半の人が感染から数日で回復するが、妊婦や乳幼児、ぜんそくや糖尿病など基礎疾患がある人は重症化しやすい。海外では未成年を中心に、健康な人が肺炎で死亡するケースも報告されている。
厚労省は、他人に感染を広げないことが重要だとして、急な発熱やせきの症状がある場合、いきなり医療機関に行くのは控え、かかりつけ医や保健所の発熱相談センターにまず電話するよう求めている。【清水健二、江口一】
東京新聞 8月26日
厚生労働省は26日、学校や医療・福祉施設などで確認された新型インフルエンザの集団感染の発生件数が、今月17日から23日までの1週間で794件に上り、前週から2割増加したと発表した。19日から25日までの1週間に入院した患者数は105人。うち7人が急性脳症になったり、人工呼吸器を装着する状態になったりしたという。
7月下旬の調査開始から、集団感染は4週連続で増加し、総数は2522件に達した。23日までの1週間だけでみても、自治体側から臨時休業・休校などの要請を受け、実施に踏み切った学校や社会福祉施設などが134に上ったことも判明。全国に感染が拡大している現状があらためて浮き彫りになった。
一方、名古屋市は26日、新型インフルエンザ感染の疑いがある同市の70代女性が25日に肺炎で死亡したと発表。厚労省は、同じ病院に入院していた患者2人と職員1人の新型感染が確認されたことから、この女性について国内4人目の死者とみなすとしている。また岐阜県は26日、甲子園ベスト4の県立岐阜商業高校で、集団感染の疑いがある生徒が96人いると発表。7月下旬以降の集団感染としては全国最大規模。
厚労省は、新学期スタートが本格化する来週以降、さらに感染者が急速に増える可能性もあるとみて引き続き監視を強化する構えだ。
都道府県別にみると、23日までの1週間に集団感染が確認された中で、最も発生件数が多かったのは沖縄の56件。次いで千葉40件、兵庫36件、京都34件、東京、大阪、熊本がいずれも31件、茨城と新潟が30件などとなっている。
中日新聞 2009年8月28日
全国5千の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は23日までの1週間で1万1636人に上り、1施設当たり2・47人になったことが28日、国立感染症研究所のまとめで判明した。ほとんどが新型インフルエンザとみられる。
感染研は、報告をもとに全国の患者数は約15万人に上ると推計した。前週の推計では約11万人だった。学校が再開する9月以降は、患者数がさらに急増する可能性もある。
前週の患者数は7750人、1施設当たり1・69人で、それぞれ大幅に伸びている。
1施設当たりの患者数は沖縄県が46・31人で突出。次いで埼玉県(2・94人)、神奈川県(2・85人)、福井県(2・84人)、徳島県(2・84人)、大阪府(2・81人)の順。
毎日新聞 8月28日
厚生労働省は28日、新型インフルエンザに国民の20%が罹患(りかん)した場合、ピーク時には1日に約76万2000人が発症し、約4万6400人が入院するとの「流行シナリオ」をまとめた。現状をシナリオに当てはめると、9月下旬〜10月上旬にピークを迎える恐れがある。患者急増に備え、厚労省は同日、都道府県に夜間診療時間の延長や重症患者の受け入れルール策定などを要請した。
◇入院は1日4万6400人
流行シナリオは、国内外の感染の広がり方や季節性インフルエンザの流行パターンを参考に試算した。罹患率を20%(例年の季節性の2倍程度)と仮定すると、感染者が増え始めてから5週目に1日当たりの発症者が10万人を超え、9週目に最大になる。国立感染症研究所の推計では、今月17〜23日の患者数は約15万人で、シナリオの3〜4週目に相当し、「9週目」は9月下旬〜10月上旬になる。
入院のピークは10週目。14週目まで1日1万人超の状態が続き、患者の0.15%の約3万8000人が重症化すると試算した。罹患率が30%の場合は、ピーク時の入院患者が6万9800人になる。
厚労省は、流行ピーク時も医療体制を維持できるよう▽診療所の時間延長や輪番制の夜間外来▽一般病床などを使った緊急時の定員超過入院▽隣県との医師派遣や重症患者受け入れルールの策定▽慢性疾患患者へのファクスによるインフルエンザ治療薬処方−−などの準備を医療機関に求めた。【清水健二】
朝日新聞 8月29日
【パリ=国末憲人】世界保健機関(WHO)は28日、新型インフルエンザによる死者が世界で少なくとも2185人に達した、と発表した。流行は今が冬の南半球など一部の地域でピークを越えたとみられている。
WHOの23日現在の集計によると、最も死者が多いのは米州管内で1876人。以下、東南アジア管内で139人、欧州管内での少なくとも85人、と続いた。感染者の報告は世界で21万例近くとなっているが、実際にはこれより大幅に多いとみられている。
地域別ではチリ、アルゼンチン、ニュージーランド、豪州でピークを越えた一方、中米やアジアの熱帯地方での広がりが目立つという。また、日本で流行期に入ったことも報告された。北米や欧州、中央アジアの温暖な地域では広がりが弱いという。
感染が拡大する新型の豚インフルエンザについて、厚生労働省は2日、最新の1週間(8月24〜30日)に1330件の集団感染が報告されたと発表した。前週の約1.5倍で、集団感染の調査を始めた7月下旬以降、5週連続で増加している。
都道府県別では東京都(167件)が最多で、北海道(93件)、大阪府(78件)、沖縄県(72件)と続いている。厚労省は「夏休みが早く終わった地域で発生件数が増えている」としている。
10人以上の集団発生は学童保育や保育所などで少なくとも13件あった。また9月1日までの1週間に87人が入院し、そのうち3人が急性脳症を発症。4人が人工呼吸器を使用したという。累計の入院患者は579人。
インフル
読売新聞 9月9日
【ワシントン=山田哲朗】米疾病対策センター(CDC)は8日、新型インフルエンザに感染しても、健康な人はタミフルやリレンザなど抗ウイルス薬による治療は原則として必要ないとする投薬指針を発表した。
抗ウイルス薬の供給には限りがあるほか、過剰投与で耐性ウイルスが出現する恐れが高まるため。CDCのアン・シュケット博士は同日の記者会見で「子供でも大人でも大多数は抗ウイルス薬は必要なく、自宅で休養することで治る」と述べた。
ただし、持病がある人や、健康な人でも重症化した場合には、ウイルス検査の結果を待たず抗ウイルス薬を投与することが必要としている。世界保健機関(WHO)も、抗ウイルス薬の投与は持病がある人など高リスク集団か、新型インフルエンザで症状が悪化しつつある人に絞るべきだと勧告している。これに対し日本では、健康な人でも感染した場合、抗ウイルス薬を投与する医療機関が多い。
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毎日新聞 2009年9月30日
新型インフルエンザの致死率は毎年流行する季節性インフルエンザと同程度の0・045%とする分析を、米ハーバード大などの研究チームがまとめ、米医学サイト「PLoS Currents」に発表した。これまでは、1957年から流行した「アジアかぜ」並みの0・5%程度とみられていた。研究チームは、4〜7月、米ミルウォーキーなど2市で入院した感染者、入院していない感染者のデータをもとに、通院しなかった人も含めた発症者を推計した。従来の解析では、確定診断を受けた患者に対する死者の割合を致死率として計算していた。【永山悦子】
毎日新聞 11月6日
国立感染症研究所は6日、10月26日〜11月1日の1週間に全国約5000カ所の定点医療機関から寄せられたインフルエンザ患者の報告数が、1施設当たり33・28だったと発表した。前週(10月19〜25日)の24・62から約1・4倍に増え、大流行を示す「警報レベル」の30を今シーズン初めて超えた。推計の新規患者は154万人で、7月からの累計は585万人に達する。大半は新型インフルエンザ感染とみられる。
1施設当たりの報告数を毎年冬に流行する季節性インフルエンザと比較すると、過去5年で3番目に多い。昨冬のピークは今年1月19〜25日の37・45だった。
北海道以外の全都府県で前週を上回り▽愛知(54・44)▽秋田(53・55)▽北海道(49・08)▽三重(46・14)▽福岡(45・64)−−などが特に多かった。30を超えたのは21都道府県。【清水健二】
毎日新聞 11月7日
新型の豚インフルエンザで重い肺炎になり、1週間以上入院した子どもがこれまでに194人にのぼり、インフル脳症と肺炎を併発した子どもも10人いることが、日本小児科学会の調べでわかった。どちらも季節性ではあまりみられない症状だという。
同学会新型インフルエンザ対策室(室長=森島恒雄・岡山大教授)が、新型による重い肺炎や脳症、心筋炎で、1週間以上入院した子どもの5日現在の報告を集計した。194人の重い肺炎の子どものうち、亡くなったのは1人だった。大半は回復しているというが、学会の予防接種・感染対策担当理事、野々山恵章防衛医大教授は、「1週間以内に退院できる子も多いので、実際はもっと大勢が肺炎になっているのでは」と指摘する。
脳症の報告は57人あった。詳細な事情がわかった27人のうち、4割近くの10人は肺炎も併発していた。
また、人工呼吸器が必要なほど重症化した子どもの中には、通常の方法では吸引できないほど、たんの粘度が高い例が散見されたという。肺炎で入院した40人のうち4人が人工呼吸器を必要とした昭和大横浜市北部病院では、4人とも、たんがモチ状に固まっていた。「細い管で引っ張ってこないと出せなかったが、わかっていれば対応できる」と梅田陽こどもセンター長は話す。(大岩ゆり)