2010年01月25日

「脳科学神話」一人歩きに警鐘

脳は別格か?
脳は一身体器官に過ぎませんが「別格」扱いされる場合が少なくありません。長年信じられてきた学説「脳と心筋の細胞は他の細胞と異なり再生しない」は今や否定されています。
こちら

しかし「脳の万能説」や「脳還元論」は科学的根拠があいまいなものが多いと思います。心理学でも「脳」の最新情報を紹介・引用するケースは多いのですが、「脳神話」とその一人歩きには十二分に注意したいと思います。ただし、脳の構造、機能そして新たなる可能性は脳の研究が進むほど「謎が謎を招く」状態にあると感じます。つまり脳の新たなる可能性は大いにあると思います。ただし、新たなる発見やモデルについては科学的手続きによる検証が必須です。

脳研究の「神話」独り歩きに警鐘 日本神経科学学会
朝日新聞 2010年 1月8日
脳科学研究の成果が、脳ブームに伴って拡大解釈されて広がっていることなどを懸念し、日本神経科学学会は8日、研究指針の改定を発表した。脳活動の測定方法の安全性や測定でわかることの限界を知り、検証を受けた論文などを発信するように求めた。

 指針では、科学的根拠のない「神経神話」と呼ばれる疑似脳科学が独り歩きしていることを憂慮。不正確な情報や大げさな解釈で脳科学への信頼が失われることがないように、科学的な根拠を明確にして研究成果を公表するよう求めた。
 経済協力開発機構(OECD)の報告によると、神経神話には「3歳までが学習を最も受け入れやすい」「右脳左脳人間」「脳は全体の1割しか使っていない」などがある。

 脳を傷つけずに調べる手法は1990年代に実用化され、脳内の血流の変化などを画像化する測定機器が普及した。比較的簡単に操作でき、人間を対象とした実験の経験が少ない工学系や文系の研究者にも広まった。同学会によると、被験者への実験の安全性の説明をしていない例や、測定機器の特性を理解しないまま実験する例もある。同学会は、ホームページで公表するなどで会員以外にも順守を呼びかける。(佐藤久恵)

脳の学習機能を論じたOECDの報告書「『Understanding the Brain: The Birth of a Learning Science』の6章「Dispelling “Neuromyths”」より抜粋

神話1右脳と左脳は異なる働きを担う。どちらが優位かで人は“右脳型”と“左脳型”に分かれる。
神話2 私たちの脳は全体の10〜20%程度しか使っていない
神話3 語学や楽器演奏など、学習には適切な時期があり、それを逃してはいけない
神話4 睡眠学習は効果がある
神話5 記憶力は改善できる
神話6 女性の脳と男性の脳は大きく異なる
神話7 生後3歳までに、脳の基礎的な能力はほぼ決まってしまう

日経BP社「脳力アップ」に要注意 より 
http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20090203/184799/


右脳・左脳、ゲーム脳…脳科学の「神話」ご注意
読売新聞 2010年1月23日
 世は空前の脳科学ブーム。タイトルに脳のつく書籍は、この5年間で3000冊以上も出版された。しかし、脳に関する気になる話は、研究結果を拡大解釈した俗説も少なくない。

 経済協力開発機構(OECD)は、こうした俗説を「神経神話」と呼ぶ。典型的な例として「〈論理的な左脳〉と〈創造的な右脳〉」というような単純な区分けと、3歳児までに豊かで多様な刺激を与えた方が頭が良くなるという「3歳児神話」の二つをあげる。
 テレビゲームをやり続けると、子供がキレやすく反社会的になるという「ゲーム脳」も、神話のひとつ。「前頭葉で脳波のアルファ波が増え、逆にベータ波が激減するパターンは認知症と一緒」というのが根拠で、教育関係者らに広く支持された。しかし、「脳科学の真実」という著書もある坂井克之・東京大学准教授(脳科学)は「ベータ波はリラックス時にも減る。結論が先にあってデータを使っただけで、脳活動のデータが何を示しているのかの判断は難しい」と批判する。
 ◆脳トレだけの効果は「?」◆
 簡単な計算や音読で脳を鍛えるという「脳トレ」もブームになった。認知症の予防に応用した学習療法も広がっている。お年寄りが脳トレに取り組み、認知症が改善したというデータも出ているが、学習療法では介護スタッフが励まし、褒めることが重要な要素だ。スタッフがお年寄りの隠れた能力に気づき、その能力を引き出す側面も大きい。
 脳トレを提唱した川島隆太・東北大学教授は「学習療法の目的は、認知症の改善で、どの要素が効いているかは重要ではない」と主張するが、坂井さんは「脳トレだけの効果なのか、科学的に検証されていない」と指摘する。
 ◆実際の研究とはミゾ◆
 こうした神話が続々と生まれるようになったのは、1990年代以降。磁気共鳴画像(MRI)など脳の分析技術が発達し、脳の画像が手軽に手に入るようになってからだ。
 兵庫教育大学の松村京子教授は「家庭や教育現場で脳科学への関心が高まっているが、実際の研究との間には溝がある。その分、単純化された説明を受け入れがち」と指摘する。ウソの話も脳の画像と一緒に説明すると、信じる人が増えるという研究もある。
 専門家でつくる日本神経科学学会も今月、科学的な根拠を明確にした情報発信を求める声明を出して現状に警鐘を鳴らした。脳の研究は教育や医療に応用されることが多いだけに、情報の出し手も受け手側も注意が必要だ。(科学部 杉森純)

posted by ichi3 at 18:12| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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