2015年06月12日

韓国のMERS感染事件 2(感染症制御のシステム不全)

韓国でのMERS感染拡大について、ウォール・ストリート・ジャーナルは、病院での感染症に対する防疫システムの不備が一因と報じています。MERSの初期症状はインフルエンザと似ており、確定診断が出るまで患者本人の行動に対するフォローが不完全であり、その間に発症者が多くの人と接し感染者を増やす結果を招いたと言えそうです。

「MERS流行に備え知っておくべき5つのこと」(WSJ JP)は 
こちら


韓国MERS中心地の病院、一時閉鎖 拡大原因は空調か
ウォール・ストリート・ジャーナル 2015年6月12日
【平沢(韓国)】韓国を襲っている中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの最初の感染者が入院し、感染拡大の中心地となった平沢聖母病院は、ソウルの南方約56キロ、平沢市の工業地帯にある。
 5月半ば、この病院の医師らは、インフルエンザのような症状で入院した68歳の男性の病因が分からず、3日間首をひねるばかりだった。男性は当時、中東から帰国したばかりだったことを明らかにしていなかった。男性はその後、ソウルのもっと大きい病院でMERSに感染していることが判明し、隔離された。だが、それまでの間に聖母病院で30人以上が2次感染した。
 12日現在で感染者は126人に達し、このうち10人が死亡した。新たに感染が確認された中には39歳の妊婦もいる。専門家が調べている疑問の1つは、中東でのこれまでのケースに比べて急速に感染が拡大したことだ。原因調査に当たっている専門家チームのあるメンバーは、聖母病院の空調システムが適切ではなく、院内感染しやすかった可能性があると指摘した。空気を再循環させる空調が感染拡大を助長したのかもしれないという。
 MERSコロナウイルスは、2012年にサウジアラビアで初めて発見された比較的新しいウイルスで、どのようにして感染が拡大するかはまだはっきり分かっていない。世界保健機関(WHO)によれば、密接な接触がなければMERSがヒトからヒトに感染することはないという。
 もう1つの疑問は、これまでのところ韓国での致死率が中東に比べはるかに低いことだ。中東では感染者の40%前後が死亡している。韓国では7人が完治している。WHOは、ウイルスに大きな変化が生じたのかどうか世界で調査が進められていることを明らかにした。
 平沢聖母病院の入院患者は、みな他の病院に移された。玄関には、5月31日付の貼り紙があり、「当病院は感染症の拡大を阻止するため一時閉鎖されます」と書かれてあった。11日朝の時点でMERS感染が疑われ隔離されている人は全国で約3800人、そのうち10%が平沢市の住民だ。隔離者のほとんどは自宅隔離で、入院しているのは一部。死者のうち3人は聖母病院で感染している。
By JEYUP S. KWAAK And ALASTAIR GALE

韓国のMERS感染拡大、始まりは1人のせき
ウォール・ストリート・ジャーナル 2015年6月9日
【ソウル】ある韓国人男性(68)が先月、ソウルから80キロ南に位置する地方都市、牙山(アサン)の診療所を訪ねた。中東から帰国して1週間後のことだった。
 彼の妻(63)は地元テレビ局とのインタビューで、「風邪を引いたような症状だった」と話した。妻によると、夫は高熱とせきの発作に悩まされていた。医師は軽い病気だと思った。
 しかし、それから3週間後、韓国で広まった中東呼吸器症候群(MERS)感染は、2012年に初めてMERSコロナウイルスが発見されたサウジアラビアに次ぐ最大規模に拡大した。韓国保健福祉省は8日、新たに23人がMERSに感染し、6人目の死者が出たことを確認した。感染者の数は計87人に上った。
 保健当局者は、韓国での感染の全てのケースがこの68歳の男性に関連しているとしている。この男性がMERSと診断されたのは、男性が最初に診察を受けてから9日後だった。政府もまた、危機対応が遅いとして批判を浴びた。
 文亨杓保健福祉相は8日の記者会見で、「われわれが初期に徹底した対応を行っていれば、MERSの感染拡大はもっと早く終息していたかもしれないと思う。非常に残念だ」と述べた。
 今回の感染拡大は、韓国内に大きな不安をもたらしたし、保健当局は最初の感染者と、彼から感染した他の保菌者と接触した可能性のある何千人もの人々を隔離している。マスクと除菌用ローションの売り上げは急増し、幼稚園から大学に至るまで2000校近くが予防的措置として休校になっている。野球の試合などの大規模なイベントでは入場者が激減している。人々がウイルスの拡大を心配しているからだ。
 最初の患者とその妻に関することはほとんど知られておらず、氏名は公表されていない。彼らに独自に連絡を取ることはできなかった。
 しかし、患者の妻のテレビインタビューによると、男性は5月11日から20日までの間、医師のもとを訪れ、医療機関を転々とした。症状が出る理由を聞こうとしたためで、どうやらその過程で少なくとも30人がMERSコロナウイルスに感染したらしい。感染先は医療関係者、病院の患者や訪問者などだった。
 保健福祉省の説明によると、男性は最初に牙山で診察を受けた翌日、熱がさらに上がったため、近くの総合病院(平沢市の聖母病院)を訪れた。同院の2人部屋に3日間入院したが、医師たちはまだ男性がMERSに感染しているとは認識していなかった。男性は3日後に退院してソウルに行き、個人の診療所を訪れた。男性はその日のうちに2件目の総合病院(サムスン医療院)の緊急診療室に行き、翌日入院したという。
 妻によれば、医師がレントゲン撮影後に夫が肺炎だとの診断を下していたが、それがいつだったかは覚えていないという。彼がMERSだと診断されたのは5月20日だった。
 サムスン医療院のSong Jae-hoon院長によると、男性の診断後適切に隔離されたため、さらなる感染を回避できた。しかし、ソウルから56キロ南にある平沢市の聖母病院から先月末に転院してきた別の患者が2日間にわたって他の患者と一緒に過ごしたため、ウイルス感染が起こったという。
 韓国疾病予防管理センターは、男性のMERS検査を当初行わなかった理由として、男性が医療関係者に対し、中東で訪れたのはMERSが発生していないバーレーンだけだと伝えていたことを挙げた。男性はまた、ウイルスの感染源となることが多い病人やラクダとの接触もないと報告していた。しかし実際には、男性はアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアを訪問していた。UAEではMERS感染の報告があるほか、サウジでは1000人以上がMERSに感染している。男性の妻は、夫は高熱で頭が混乱していたため、渡航歴の説明に食い違いが出たと述べた。
 MERS感染は、バーレーンを除く全てのアラビア半島の国で報告されている。
 世界保健機関(WHO)によると、中東以外で報告された感染の全てはこの中東地域から持ち出されたケースのようだ。米疾病対策センター(CDC)はMERSを理由として中東全体を渡航注意地域に指定している。
 専門家たちは、MERS診断の遅れと地元の風習(行動慣行)が、韓国での感染拡大を複雑化させたと指摘する。地元の医師たちによると、韓国の患者は診断が確定するまで、さまざまな病院を頻繁に訪れる傾向にあり、これがウイルス拡大につながった可能性があるという。
posted by ichi3 at 21:03| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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