2017年04月06日

トランプ政権はアメリカをファシズム化する

ウォール・ストリート・ジャーナルの論説室副委員長ブレット・スティーブンス氏は、トランプ政権のメディア戦略は『メディアの「批判」を「政治的な動き」にすり替えればよいと思っている。「主流メディアは政治的な意見が異なるトランプ政権を攻撃している」と国民に訴え、批判に耳を傾けないように促すのだ』と指摘し、『政権に対するすべての批判を「政治的な偏向」と決めつけて排除しようとするものだった。トランプ政権のやり方はファシズムそのものであり、とても危険なものなのだ』と述べています。
日本でも似た状況は先行しており、「独裁国家」がアメリカと日本の共通キーワードとなってきました。

トランプ政権
手法はファシズム WSJ論説室副委員長に聞く
毎日新聞 2017年4月6日
https://mainichi.jp/articles/20170406/ddm/004/030/016000c

トランプ米政権と主流メディアとの対立が収まる気配がない。政権側は都合の悪い情報を「フェイク(偽)ニュース」と切り捨て、2月にはホワイトハウスの記者会見から一部メディアを締め出した。一方「オバマ前政権に電話を盗聴された」など、事実に基づかない情報発信も多い。政権の狙いは何か。メディアはどう対処すべきか。米保守紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の論説室副委員長ブレット・スティーブンス氏(43)に聞いた。【松井聡】
−−トランプ政権はなぜメディアをしつこく攻撃するのか。

 ◆いくつかの理由がある。一つ目は政治的な狙いだ。トランプ大統領は、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビなどのいわゆるリベラル系の「主流メディア」について、「大衆からは支持されていない」と考えている。だから、主流メディアを攻撃して大衆の人気を得ようとしているのだ。二つ目の狙いは、自分たちに批判的な主流メディアに取って代わるようなメディアを作ろうというものだ。政権の首席戦略官バノン氏がトップを務めていたオンラインニュースサイト「ブライトバート」やFOXテレビなど、自分たちを応援してくれるメディアに情報を流したり、インタビューの機会を与えたりすることで、こうしたメディアの存在感を高めようとしている。同時に政権は、主流メディアが「もろい」と考えており、権力を握る自分たちが批判すればメディアが萎縮し、すり寄ってくるとも思っている。

−−トランプ政権はメディアからの批判を意に介していないようだ。

 ◆彼らは、主流メディアによる批判は「偏向報道だ」として一蹴すればよいと考えている。メディアの「批判」を「政治的な動き」にすり替えればよいと思っている。「主流メディアは政治的な意見が異なるトランプ政権を攻撃している」と国民に訴え、批判に耳を傾けないように促すのだ。こうした政権のたくらみは、大統領顧問のコンウェー氏が出演した今年1月のテレビ番組のインタビューで明らかになった。ある種のアクシデントではあったが、質問への答えに窮した彼女は「オルタナティブ・ファクト」(※1)という言葉をとっさに使った。そして、「真実は二の次だ」とばかりに主張した。さらに「なぜそんな質問ばかりするのか」と、インタビュアーが政治的に偏向しているかのような印象を抱かせようとした。論点をすり替える政権のメディア戦略そのものだ。

 −−だから、メディアからいくら批判を浴びても、真実ではない発言を繰り返しているのか。

 ◆その通りだ。論点のすり替えにたけているから、トランプ政権はメディアの批判が怖くないし、平気でうそもつける。たくさんのうそをつけば、多くの人が慣れて問題にしなくなる。政権の強気な姿勢の背景には、主流メディアがこれまで記者個人の思想信条や意見を記事や番組に反映させてきたこともある。中には左派的な思想を持つ記者がいて、読者や視聴者もそのことを知っている。「主流メディアは偏向報道だ」という政権の主張に納得してしまう人も出てきてしまう。政権の戦略は一定程度成功していると言えるのだ。

 −−このメディア戦略はトランプ政権に特有のものか。

 ◆論点のすり替えの手法は、トランプ政権が始めたことではない。ヒトラーやムソリーニといった1930〜40年代の独裁者が用いた手法と同じだ。ナチスなどのファシズムについて研究したドイツ人哲学者のハンナ・アーレント(1906〜75年)が書いた「全体主義の起源」(51年)という本がある。この中で彼女は、独裁者が用いたプロパガンダの手法を明らかにした。その手法は、政権に対するすべての批判を「政治的な偏向」と決めつけて排除しようとするものだった。トランプ政権のやり方はファシズムそのものであり、とても危険なものなのだ。

真実、淡々と報じ対抗

 −−トランプ政権に対し、メディアはどう向き合うべきだろうか。

 ◆メディアにできるのは、政権と一定の距離を置き、真実を淡々と報道することしかない。最も危険なのは、独占インタビューやスクープが欲しいがために、彼らにすり寄った報道をしてしまうことだ。メディアの特性だが、情報欲しさに大統領や副大統領のような権力と影響力を持つ人たちに近づくことが多々ある。しかし、我々は決して権力者の代弁者になってはいけない。スクープの機会を逃しても、政権側の主張が真実かうそかを客観的に見分け、分析することが必要で、それが我々の役目だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙はニューヨーク・タイムズ紙などリベラル系メディアと考え方が異なるし、ホワイトハウスの記者会見にも出席している。だが、ジャーナリズム機関として担っている役割は同じだ。3月22日付のコラムでも「(トランプ氏が)事実を尊重しない限り、大半の米国人は『偽大統領』と断じるかもしれない」ときちんと批判している。

 −−トランプ氏はツイッターなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を多用している。SNSでの発信はメディアの検証を経ないため、誤った情報が社会に広まるとの懸念もある。

 ◆出回っている情報が真実かどうかを見分ける力は、一人一人の市民が身に着けるべきだ。ジャーナリストは社会活動家でなく、心理学者でもない。市民を教育することはできない。ドイツ政府がうそを流布させないためにSNSの規制に乗り出している(※2)が、賛成できない。フェイスブックやツイッターは報道機関ではなく、あくまで情報発信のツールだ。非常に米国的な考え方だが、自由な言論は保証されるべきで、検閲し、書き込みを削除するようなことには反対だ。繰り返しになるが、我々ジャーナリストの役割は、優れた分析力によって真実が何かを見極め、政権の言い分との違いを論理的に示すことだ。そして、信頼するに足る記事や番組を社会に提供していくことなのだ。

 (※1)オルタナティブ・ファクト
 英語で「もう一つの事実」の意味。コンウェー大統領顧問が発言し、トランプ政権の「事実軽視」を象徴する言葉として広まった。発端は、1月のトランプ大統領の就任式に集まった群衆の数を巡る議論。米メディアは現場の空撮写真を基に2009年のオバマ前大統領就任時より少なかったと報じたが、政権側は「史上最大だった」と反発。コンウェー氏がNBCテレビのインタビューで「なぜうそをつくのか」と聞かれ、「(政権の主張は)オルタナティブ・ファクト」だと主張した。

 (※2)ドイツのSNS規制
 3月にメルケル政権が国会に提出した法案は、フェイスブックやツイッターなどSNSを運営する企業に対し、虚偽事実の書き込みや、特定の人種や民族への憎悪をあおる投稿を削除するよう義務づける。違反した場合は最大5000万ユーロ(約60億円)の罰金を科す。


 ■人物略歴
ブレット・スティーブンス氏
 BretStephens ニューヨーク出身のユダヤ系米国人。共和党支持の保守派ジャーナリスト。2013年に国際批評コラムの連載でピュリツァー賞受賞。15年に広島の原爆投下を正当化するコラムを書き、物議を醸した。トランプ氏については16年の大統領選中から「人としての基本的な品性が欠けている」として批判的な立場を取ってきた。笹川平和財団の招きで3月に来日した。


ラベル:独裁
posted by ichi3 at 23:13| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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