2018年12月18日

ジョンソン&ジョンソン社ブランド危機(アスベスト問題)

ロイターが『米J&J、アスベスト混入隠ぺいか 社内報告書などで発覚』と報じました。同社のアスベスト問題はすでに報じられ裁判にもなっていますが、『一部の書類はこれまでに消費者による訴訟で明らかになったり、一部で報道されたりしたが、ほとんどは裁判所の指示で同社の機密扱いとなっており、公になったのは今回が初めて』としています(ロイター)。
J&J社は『グローバルメディア担当バイスプレジデント、アーニー・ニューウィッツ氏は、ロイターの取材にメールで回答し「当社のタルクはアスベストを含んでおらず、がんの原因にはならないことを多くの試験が証明している」と主張。「当社がタルクの安全性について把握していた、あるいは情報を隠していた、とする主張は間違っている」』と反論しています。
株価は会社の信頼度を表す指標の一つです。ロイターのコラムでは『同社が1970年代から原料滑石(タルク)の試験でベビーパウダーにアスベストが含まれていたことを数十年間把握していたとのロイター報道を受けて、同社株は14日急落し、時価総額から400億ドル(約4兆5000億円)が消えた』『もし歴史が道しるべになるのなら、市場の反応は過剰だったかもしれない。だが訴訟や傷ついたブランドは、そう簡単には解消しない』と厳しく指摘しています。

J&Jの株価
https://www.marketwatch.com/investing/stock/jnj

J&J社は「タイレノール事件」でのリスク管理が見事であったことから、市原は授業でも紹介していました。
信頼とコミュニケーション(授業のケース)
http://ichi3.seesaa.net/article/24812486.html
エピソードの概要は『1980年代に、シカゴ近郊で何者かによってシアン化合物が混入された同社の鎮痛剤タイレノールを飲んだ7人が死亡する事件が発生した。これを受けて、3100万瓶を回収し、消費者に注意を促す広告を出し、異物混入を困難にするパッケージを導入したJ&Jの当時の対応は、現在でも信頼回復のための対応策の好例として米国のビジネススクールの授業でよく取り上げられている』(ロイター)と報じています。
続報を待ちますが、世界の「トップクラスブランド」を誇る企業の信頼が揺らいでいます。


米J&J、アスベスト混入隠ぺいか 社内報告書などで発覚
ロイター 2018年12月17日
https://jp.reuters.com/article/johnson-and-johnson-idJPKBN1OG0EF
[ロサンゼルス 14日 ロイター] - 米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ.N)は、少なくとも1970年代から同社のベビーパウダーに発がん性があるアスベストが混入していた試験結果を知りながら隠した疑いがある。ロイターが同社の社内報告書やメモ、供述書などを精査し確認した。

ロイターの調査によると、J&Jは少なくとも1971年から2000年代前半にかけて、ベビーパウダーなどに少量のアスベストが含まれるという試験結果が出ていた。同社幹部や鉱山幹部、科学者、医者や弁護士などは問題を把握し対応策を検討したが、当局への報告や消費者への開示はしていなかった。また、パウダーの原料となるタルク(滑石)などに含まれるアスベストの量に制限を設けようとした当局の計画や、健康への影響に関する科学者の調査に対しても影響力を行使しようとし、成功したという。

最も早くアスベスト含有に言及していたのは、1957−58年の研究所による報告で、イタリア企業が販売したJ&Jのパウダーには繊維状や針状の「トレモライト」が含まれていたとする内容だった。トレモライトはアスベストに分類される鉱物の1種。

2000年前半にかけて、J&J内の科学者や社外の研究所、同社が商品を供給している企業も同様の報告をしている。報告書では、パウダーに含まれるのはアスベストまたは通常アスベストに分類されるものであると指摘している。

1976年に米食品医薬品局(FDA)が化粧品のパウダーに含まれるアスベスト含有量に制限を設けようとしていたとき、J&Jは当局に対し1972年12月ー73年10月にかけて同社商品にアスベストは見つからなかったと報告していた。しかし72−75年に研究所3カ所が実施した少なくとも3つの試験ではアスベストが見つかっており、そのうち1つでは「比較的高水準」のアスベストが検出されたにもかかわらず、当局には報告しなかったという。

ロイターが入手した社内書類の多くではアスベストは含まれていないとの結果だったが、J&Jは社内調査でも常にアスベストが検出されないようにする手法を採用しており、調査対象とするパウダーも非常に少量だったという。

J&Jは、タルクは安全という従来の主張を崩していない。同社のグローバルメディア担当バイスプレジデント、アーニー・ニューウィッツ氏は、ロイターの取材にメールで回答し「当社のタルクはアスベストを含んでおらず、がんの原因にはならないことを多くの試験が証明している」と主張。「当社がタルクの安全性について把握していた、あるいは情報を隠していた、とする主張は間違っている」と強調した。

一部の書類はこれまでに消費者による訴訟で明らかになったり、一部で報道されたりしたが、ほとんどは裁判所の指示で同社の機密扱いとなっており、公になったのは今回が初めて。

J&Jのパウダーを巡っては、タルクを原料に含む商品でがんになったと主張する人たちが数千件の訴訟を起こしている。


コラム:J&Jのベビーパウダー危機、長期化する可能性
ロイター 2018年12月17日
https://jp.reuters.com/article/johnson-johnson-cancer-breakingviews-idJPKBN1OG0BD
[ニューヨーク 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米医薬品・日用品大手、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J(JNJ.N)のベビーパウダーを巡る滑石(タルク)危機は、何年も長引くことだろう。
 同社が1970年代から原料滑石(タルク)の試験でベビーパウダーにアスベストが含まれていたことを数十年間把握していたとのロイター報道を受けて、同社株は14日急落し、時価総額から400億ドル(約4兆5000億円)が消えた。

J&Jは、今回の記事を「ばかげた陰謀論だ」と一蹴。「J&Jや規制当局、独立専門家は、アスベストの含有を調べるあらゆる手法を使っており、これらの手法によって判明した結果のすべてが、われわれのタルクにアスベストが含まれていないとの結論だった」と主張する。

もし歴史が道しるべになるのなら、市場の反応は過剰だったかもしれない。だが訴訟や傷ついたブランドは、そう簡単には解消しない。

同社のベビーパウダーを巡っては、タルクが健康障害を引き起こしたとして1万件以上の訴訟が起きている。今年7月には、原料に含まれるアスベストが原因で卵巣がんを発症したとして女性22人が訴えた訴訟で、ミズーリ州セントルイス巡回裁判所の陪審が同社に46億9000万ドル(約5320億円)の損害賠償支払いを命じる評決を下している。

だが市場はこの判決をほぼ無視した。同社の株価は、1月から今月13日までに5%近く上昇し、時価総額は4000億ドルに達していた。今回、その1割が吹き飛んだことは、過剰反応だったかもしれない。

投資家は、巨額和解の可能性が高まるとパニックに陥る傾向がある。米製薬大手メルク(MRK.N)が2004年、心臓発作との関連が指摘された鎮痛剤バイオックスを販売停止した際には、時価総額の27%に相当する270億ドルを失った。同社は最終的に、総額50億ドル以下を支払うことで和解した。

同様に、ドイツの製薬・化学大手バイエル(BAYGn.DE)の株価も、今年買収した米種子・農薬大手モンサントの除草剤ががんの原因になったとして訴えられていることから、150億ドルの債務を織り込んだ水準で取引されている、と米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは推定している。

こうした訴訟費用の負担が、早期に終わることはない。メルクは、販売停止から10年以上がたった今も、バイオックス関連の訴訟を抱えている。

だが最も修復が難しいのは、傷ついたJ&Jの評判だろう。

1980年代に、シカゴ近郊で何者かによってシアン化合物が混入された同社の鎮痛剤タイレノールを飲んだ7人が死亡する事件が発生した。これを受けて、3100万瓶を回収し、消費者に注意を促す広告を出し、異物混入を困難にするパッケージを導入したJ&Jの当時の対応は、現在でも信頼回復のための対応策の好例として米国のビジネススクールの授業でよく取り上げられている。


J&Jがもし本当に、世界中の赤ちゃんに使われている製品に関わるやっかいなデータを黙殺し続けていたとすれば、いずれ反対の例として取り上げられることになるかもしれない。
posted by ichi3 at 02:15| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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