新型肺炎、WHOが「緊急事態」を宣言
朝日新聞 2020年1月31日
https://digital.asahi.com/articles/ASN101RWQN10UHBI001.html?iref=comtop_8_02
中国で集団発生し、感染が中国国外に広がっている新型コロナウイルスについて、世界保健機関(WHO、本部スイス・ジュネーブ)は30日に専門家委員会による緊急会合を開き、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
緊急事態は、感染が国境を越えて広がり、感染拡大防止に国際的な対応が必要な場合に、専門家委の判断を踏まえWHOの事務局長が宣言する。緊急事態宣言は、アフリカのコンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱について昨年7月に出されて以来、6例目。
30日夜(日本時間31日未明)に記者会見したテドロス・アダノム事務局長は、中国国外での感染例や、感染が確認された国が増えていると指摘。「中国国内ではなく、国外の状況を見て判断した」と宣言した理由について述べた。一方、人の移動や貿易の制限は、WHOとして勧告はしないとしている。
新型肺炎をめぐっては、専門家委が22、23日に緊急会合を開いて緊急事態にあたるか検討。この時点では「中国国外でのヒトからヒトへの感染が確認されておらず、時期尚早だ」として、宣言を見送った。だがその後、日本やベトナムでヒトからヒトへの感染が確認されるなど、中国国外での感染が急速に広がったため、再度緊急会合を開いた。(ジュネーブ=河原田慎一)
これまでに出された世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言
2009年4月 新型インフルエンザの大流行
メキシコ・米国から世界に拡大(10年8月に解除)
14年5月 ポリオのアジア、中東、アフリカでの流行
主に小児が感染(継続中)
14年8月 エボラ出血熱の西アフリカでの流行
コウモリからヒトに感染の可能性。致死率が高い(16年3月に解除)
16年2月 ジカ熱の中南米での拡大
蚊の媒介で感染。母子感染で新生児に小頭症の可能性(16年11月に解除)
19年7月 エボラ出血熱のアフリカ中部での流行
コンゴを中心に感染拡大(継続中)
20年1月 新型コロナウイルスの流行
中国から感染拡大
NHK 2020年1月31日
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、WHO=世界保健機関が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したことについて、WHOで感染症対策を指揮した経験のある東北大学の押谷仁教授は「この1週間で、日本などでヒトからヒトに感染したケースが複数確認されるなど、国境を越えてこれからも感染が広がっていくリスクが高いということを鑑みたと思う」と述べました。
そのうえで、「2003年に感染が拡大したSARSと決定的に異なるのは、軽症や、症状が出ないケースが一定程度あることだ。そうした人たちから感染するリスクが否定できず、知らず知らずのうちに広がるおそれがあり、WHOも、封じ込めはSARSより難しいと見ていると思う。今後は、医療体制がぜい弱な国の支援を含めて、国際社会が連携して対策にあたる必要があるほか、日本を含めて、感染拡大を前提にした医療体制の整備を真剣に考える時期に来ている」と指摘しました。